プロポーザル方式と総合評価落札方式は何が違うのか——法的根拠と手続きから読み解く自治体調達
自治体の調達情報を追っていると、「公募型プロポーザル」と「総合評価一般競争入札(総合評価落札方式)」という2つの言葉に行き当たる。どちらも価格だけで決めない調達方式という点は共通しているが、法律上の位置づけも、審査の仕組みも、契約金額が確定するタイミングも異なる。この違いを理解しておくと、公募情報を見たときに「どのタイミングで何を求められているか」を素早く把握できる。本稿は両方式の法的根拠と手続きの流れを、自治体の公式マニュアル・ガイドラインに基づいて整理する。
自治体契約の原則——一般競争入札とその例外
地方自治法第234条は、自治体の契約(売買・貸借・請負等)は一般競争入札、指名競争入札、随意契約、せり売りのいずれかの方法で締結すると定めており、原則は一般競争入札である。指名競争入札・随意契約・せり売りは、政令(地方自治法施行令)で定める場合に限って例外的に用いることができる。プロポーザル方式と総合評価落札方式は、この「原則と例外」のどちら側に位置するかがまず異なる。
プロポーザル方式とは何か——随意契約の一種
守口市が公開する「公募型プロポーザル方式事務マニュアル」(令和7年4月改正)は、プロポーザル方式を「参加者から企画提案を提出させ、提案内容を審査し、企画内容や業務遂行能力が最も優れた者を契約の相手方の候補者として選定する方式」と定義する。同マニュアルは続けて、プロポーザル方式は地方自治法第234条第1項にいう随意契約であり、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号(その性質又は目的が競争入札に適しないもの)に該当する場合に用いるものであって、本来入札すべき業務をプロポーザル方式で契約することは許されないと明記している。
対象業務としては、同マニュアルが例示するとおり、(1)高度又は専門的な技術力・企画力・知識が要求される業務(計画策定・調査分析等)、(2)参加者の企画や実績等に基づいて実施方法を決定する方が優れた成果が期待できる業務(窓口対応業務・システム開発等)、(3)大規模かつ複雑な施工計画の立案など高度な知識と実績を要する業務(建築設計・PFI整備事業等)、(4)芸術性・創造性を要する業務(イベント運営等)などが挙げられている。
国土交通省が建設コンサルタント業務等について定める「プロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」(平成27年11月、令和5年3月一部改定)も、選定の考え方を同様に整理している。同ガイドラインは、業務内容が技術的に高度、または専門的な技術が要求される業務であって、提出された技術提案に基づいて仕様を作成する方が優れた成果を期待できる場合にプロポーザル方式を選定するとしている。つまり、仕様そのものを事業者の提案に委ねる方が良い成果につながる案件がプロポーザル方式の対象になる。
総合評価落札方式とは何か——一般競争入札の一方式
一方、総合評価落札方式は随意契約ではなく、一般競争入札(または指名競争入札)の枠内にある。根拠は地方自治法施行令第167条の10の2で、価格だけでなく価格以外の条件(技術力・実施体制等)も含めて総合的に落札者を決定する方式と定められている。千葉県が定める「物品・委託等総合評価落札方式に係る学識経験者選定要領」は、この方式の実施にあたって、施行令第167条の10の2第4項及び第5項の規定により学識経験を有する者(学識経験者)の意見を聴かなければならないと定め、学識経験者は2名以上を委嘱するとしている。落札者決定基準を定めようとするとき、および実際に落札者を決定しようとするときに、それぞれ改めて意見聴取が必要かどうかを学識経験者が判断する仕組みである。
国土交通省の前掲ガイドラインは、総合評価落札方式を選定する場面を「事前に仕様を確定可能であるが、入札者の提示する技術等によって、調達価格の差異に比して、事業の成果に相当程度の差異が生ずることが期待できる場合」と説明している。仕様自体は発注者側で確定できる点が、仕様の作成を事業者の提案に委ねるプロポーザル方式との違いになる。同ガイドラインでは、価格と技術の評価配点比率について、業務の難易度に応じて標準型は1:2または1:3、簡易型は1:1または1:2を用いるとしている(この配点比率は同省発注の建設コンサルタント業務向けの運用例であり、個々の自治体の総合評価案件では発注者が定める評価基準ごとに異なる)。
なお同ガイドラインは、プロポーザル方式・総合評価落札方式のいずれによらない場合でも、入札参加要件として一定の資格・実績等を付すことで品質を確保できるときは、価格競争方式を選定するとしている。3方式は並列の選択肢であり、案件の性質に応じて発注者が使い分けている。
両者の違いを整理する
| 項目 | プロポーザル方式 | 総合評価落札方式 |
|---|---|---|
| 契約類型 | 随意契約(地方自治法234条1項・施行令167条の2第1項第2号) | 一般競争入札等の一方式(施行令167条の10の2) |
| 何を評価するか | 企画提案の内容・業務遂行能力 | 価格+価格以外の条件(技術力等) |
| 仕様の確定 | 提案に基づいて仕様を作成する方が優れた成果を期待できる案件が対象 | 発注者側で事前に仕様を確定できる案件が対象 |
| 契約金額 | 候補者選定後に価格を交渉・協議して随意契約を締結 | 入札の時点で価格が確定(落札) |
| 学識経験者の関与 | マニュアル上の必須要件ではない(選定委員会に外部委員を加える例はある) | 施行令上、2名以上の学識経験者への意見聴取が必須 |
プロポーザル方式の手続きの流れ
守口市のマニュアルが示す基本的な事務手順は、おおむね次のとおりである。①選定委員会の設置、②参加資格・募集要領・仕様書・評価基準の作成、③募集要領の公示、④質疑書の提出・回答、(必要に応じて参加表明書による一次審査での絞り込み)、⑤参加表明書・企画提案書の提出、⑥参加資格の確認・通知、⑦プレゼンテーション・ヒアリング、⑧採点、⑨候補者の選定、⑩選定結果の通知、⑪評価・選定結果の公表、⑫契約締結(価格交渉を含む)。募集要領の公示から企画提案書の提出期限までは、良質な提案を作成する日数を確保するため標準1ヶ月程度を見込むとされている。
候補者は、失格者を除いたうえで総合点の最も高い者とし、最高点の者が複数いる場合は価格提案の金額が最も安い者を候補者とする。全参加者の得点が一定水準(同マニュアルでは総合点の得点率60%未満程度が目安)に満たない場合は、候補者を選定せずプロポーザルの手続き自体を中止することもあるとされている。
失格事由——提案が門前払いになるケース
同マニュアルは、参加者に次の行為があった場合は失格(選定対象からの除外)とすると定めている。(1)選定委員会の委員に直接・間接を問わず故意に接触を求めること、(2)他の参加者と応募提案の内容や意思について相談すること、(3)候補者選定終了までの間に他の参加者へ応募提案の内容を意図的に開示すること、(4)応募提案書類に虚偽の記載を行うこと、(5)その他選定結果に影響を及ぼすおそれのある不正行為、(6)募集要領に記載された提案上限額を超える提案を行うこと、(7)その他募集要領等に定めた失格事由に該当する場合。委員への接触や他社との内容共有が明確な失格事由として列挙されている点は、審査中の行動として押さえておく必要がある。
企業が実務で押さえておきたいポイント
- どちらの方式かで、提案すべき内容の重心が変わる。総合評価落札方式は仕様がすでに確定しているため、示された仕様の範囲内で価格と技術提案のバランスを詰める作業になる。プロポーザル方式は仕様そのものが提案対象に含まれる場合があり、「何を・どう実施するか」を自ら組み立てる余地が大きい。
- プロポーザル方式でも、価格は選定後の交渉事項として残る。候補者に選ばれた時点では契約が成立したわけではなく、その後の見積り提出・価格交渉を経て随意契約を締結する。総合評価落札方式では入札の時点で価格が確定するため、この違いを踏まえたスケジュール感で臨む必要がある。
- 失格事由は事前に必ず確認する。委員への接触や他社との情報共有は、意図の有無にかかわらず失格につながり得る行為として明記されている自治体が多い。個別案件の募集要領・実施要領に記載された失格事由は、提出前に必ず確認したい。
- 総合点が一定水準に満たなければ、応募者がいても候補者なしとなり得る。守口市の例のように、得点率が一定水準(総合点の60%未満程度)に届かない提案は候補者として選定されないことがある。価格面だけでなく、企画提案の内容全体で基準点を上回る完成度が求められる。
参考資料
- 守口市「守口市公募型プロポーザル方式事務マニュアル」(令和7年4月改正・PDF・https://www.city.moriguchi.osaka.jp/material/files/group/85/20250401proposalmanual.pdf /取得日2026年7月19日)
- 国土交通省「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」(平成27年11月、令和5年3月一部改定・PDF・https://www.mlit.go.jp/tec/content/001598728.pdf /取得日2026年7月19日)
- 千葉県「物品・委託等総合評価落札方式に係る学識経験者選定要領」(PDF・https://www.pref.chiba.lg.jp/kanzai/nyuu-kei/buppin-itaku/kitei-tsuuchi/documents/h2041gakushiki-youryo.pdf /取得日2026年7月19日)
- e-Gov法令検索「地方自治法」第234条(https://laws.e-gov.go.jp/law/322AC0000000067 /取得日2026年7月19日)