農林水産業

米価下落、独自支援は「容易ではない」——稲敷市は10億円規模の補助を見送り、土佐町は応援制度を創設せず、新潟市議会には買い戻しを求める意見書案

関連自治体:茨城県稲敷市 / 島根県雲南市 / 高知県土佐町 / 北海道せたな町 / 茨城県 / 北海道網走市 / 新潟県新潟市

茨城県稲敷市は2026年9月4日の市議会一般質問で、米価下落分の独自補填には10億円超の予算が必要だとして、市独自の農家支援は容易ではないと副市長が答弁した。2026年産米の概算金が主産地で前年比2〜4割下落する中、9月議会は独自支援に慎重な答弁が相次いだ。

各市の表明

  • 茨城県稲敷市(2026年9月4日・一般質問・副市長/地域振興部長): 副市長は、国の生産段階のコスト指標(玄米60キロ当たり2万535円)をすでに公表された他県の概算金が大きく下回るものも少なくないとしたうえで、その差額として60キロ当たり3,000円を市独自に補助した場合、10億円を超える予算が必要になるとし、市独自に稲作農家の経営を支えることは現実的には容易ではないと答弁した。地域振興部長は、農地集約による経営効率化とスマート農業導入補助の継続で対応する方針を示した。
  • 島根県雲南市(2026年9月定例会・一般質問・市長): 市長は、米価下落への直接的な支援について、現時点では十分な予算を確保できず、今の段階では予定をしていないと答弁した。所得保障を求める質問には、中山間地域直接支払交付金の活用を挙げつつ、一律の所得保障での対応は難しいとの考えを示した。
  • 高知県土佐町(2026年9月7日・一般質問・町長): 町長は、町産米の販売実績に応じ生産者と購入者双方に補助する地産地消応援制度の創設案について、確認方法の特定が難しく事務負担や公平性の課題があるとして、現時点で実施する考えはないと答弁した。既存の農業振興策の充実で対応する考えを示した。
  • 北海道せたな町(2026年9月7日・一般質問・町長): 町長は、令和8年産の概算金が主力品種で前年比4割減となったことを踏まえ、離農につながりかねないとの懸念を示しつつ、米価下落への直接の支援策は今のところ考えていないと答弁した。農協が計画するライスターミナル整備など施設整備での側面支援を重視する考えを示した。
  • 茨城県(2026年9月10日・一般質問・知事): 知事は、米価下落は供給量が需要量を大きく上回ることが要因だとしたうえで、輸出用米への転換と大規模経営体育成、スマート農業導入で収益性の高い農業構造への転換を進める方針を示した。県産米の輸出額は知事就任前と比べ約70倍の11億4,300万円に拡大したとした。
  • 北海道網走市議会(2026年9月3日・総務経済委員会): 委員会は、備蓄米水準の早期回復と生食用ジャガイモの輸入解禁を行わないことを求める意見書の提出について審議し、全会一致で採択すべきものと決定した。
  • 新潟県新潟市議会(2026年9月4日・9月定例会本会議): 本会議では、政府備蓄米の早期かつ計画的な買い戻しや水田農業政策の見直し、生産コストを反映した適正な価格形成への支援を国に求める意見書案が議員提案され、委員会付託を省略して審議入りした。

背景

共同通信によると、JAグループは2026年9月9日までに主産地を含む16道県で2026年産米の概算金を前年より2〜4割低く提示した。岩手県「ひとめぼれ」は玄米60キロ1万7,200円(前年比39%減)だった。

農林水産大臣は9月1日の会見で、放出済みの政府備蓄米について令和7年産21万トンを対象に9月中の買い戻しを進めると表明し、9月18日に農林水産省が実際の買い戻しを発表した。備蓄米は適正水準100万トン程度への回復を目指すとしている。

稲敷市や土佐町のように独自の直接支援を見送り、国・県への要望や施設整備、輸出拡大に軸足を置く自治体が多い。担い手不足下で農業基盤の維持が課題になる構図は、農地保全の国交付金、担い手不足で自走にめど立たずとも重なる。当社データベースでは2025年9月以降、「米価・備蓄米」と「下落・買い戻し」を同一議題で含む議会答弁関連記録が168自治体で確認されている。


出典:

記事中の議会での発言・答弁は、公開されている議事録と議会中継の動画に基づいています。リンク先の動画は、公開元の都合により視聴できなくなる場合があります。