生成AI、「試行」の次は全庁展開——文書作成・要約から始める自治体の実装手順
関連自治体: 愛知県知立市 / 愛知県尾張旭市 / 岐阜県恵那市 / 佐賀県唐津市
愛知県知立市は2026年3月5日の市議会本会議で、生成AIの実証実験結果をホームページで公表したうえで、来年度は文書作成・要約など効果が見えやすい業務から全庁展開する方針を企画部長答弁で明らかにした。生成AIを試行から全庁展開へ移す段階に入った自治体からは、対象業務の選定や利用ガイドライン見直しの方針が相次いで示されている。
各市の表明
- 愛知県知立市(2026年3月5日・本会議・企画部長): 2月末の実証実験終了後にアンケートの集計・分析を行い、利用状況や用途、時間短縮などの効果、情報漏洩を防ぐセキュリティ対策をホームページで公表すると答弁した。来年度は全庁共通で使う機能から始め、文書作成・要約・多言語対応・優しい日本語変換など効果が見えやすくリスクの低い業務から展開する。現場系などパソコンに向かう時間が限られる部署には一律の研修だけでは不十分で、各課固有の業務課題を確認して提案できる個別支援体制が必要だと述べた。
- 愛知県尾張旭市(2026年3月5日・本会議・企画部長): 試行中の生成AIで文字数の消費を理由に制限していたファイルアップロード機能について、検証の結果、当初想定したほどの負荷にならない場合があると確認できたと答弁した。個人情報を含まない公開情報や内部資料などに限定したうえで制限を緩和し、活用の幅を広げる。試行版の生成AI利用ガイドラインを運用状況や検証結果を踏まえてより厳格な内容へ見直し、職員への周知を徹底すると述べた。
- 岐阜県恵那市(2026年3月18日・本会議・まちづくり企画部長): 2025年10月から、グループウェアのMicrosoft 365に付帯する生成AIツールMicrosoft Copilotの本格運用を開始したと答弁した。2026年1月の1ヶ月間で職員325名が利用し、生成AIへの指示件数は12,434件に上った。主な用途は文書作成や議事録の要約整理などで、利用した職員の90%以上が業務時間短縮や品質向上などの業務効率向上を実感したと述べた。利活用ガイドラインは2025年9月に策定したとした。
背景
生成AIの自治体利用をめぐっては、総務省が2025年12月16日に「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)」を公表し、生成AIの活用事例やリスク対策に関する記述を拡充するとともに、自治体が作成する生成AIシステム利用ガイドラインのひな形(Ver1.0)を示した(総務省)。試行段階を終えた自治体では、対象業務の選定、現場部署への個別支援、利用ガイドラインの見直しが共通の論点になっている。当社データベースでは、過去1年(2025年7月以降のデータ)で「生成AI」と「全庁」の両方に言及した議会関連記録が133自治体で確認されている。
唐津市の事例——ナレッジベース型AIの実証実験へ
佐賀県唐津市は2026年3月9日の市議会本会議で、庁内の公式文書だけを参照して回答するナレッジベース型の生成AIについて、令和8年度に実証実験を検討していると総合政策部長答弁で明らかにした。2025年度に実施した庁内向けAIアシスタントの実証実験で一定の効果と課題を確認したうえで、次の段階として情報の範囲を限定した仕組みの検証に進む。
- 佐賀県唐津市(2026年3月9日・本会議・総合政策部長): 令和7年7月から10月までの4ヶ月間、庁内向けAIアシスタントの実証実験を実施し、総利用件数は延べ4,203件、利用職員数は延べ449名だったと答弁した。主な用途は内部規定の検索、通知文などの文書作成、制度概要の整理、議事録の要約などで、1回あたり平均約1,500文字のやり取りが行われ、文書作成時間の短縮、制度説明文の平準化、内部照会の減少といった効果が職員から報告されたとした。一方で、回答精度向上のためのデータ整備、情報セキュリティ対策、利用ルールの明確化といった課題も明らかになったと述べた。令和8年度には、市の条例・規則・要綱・内部マニュアルなどの公式文書をあらかじめデータベース化し、それらの情報のみを参照して回答を生成するナレッジベース型の生成AIの実証実験を検討していると答弁した。この仕組みは、インターネット上の情報をもとに回答する一般的な生成AIとは異なり、市が保有する公式文書を基盤とするため、回答の根拠を明確にでき、情報の範囲を限定できる点に特徴があるとした。実証にあたっては個人情報や機密情報の管理を徹底し、回答精度や運用上の課題を検証したうえで段階的な活用拡大を検討する。生成AIは職員の判断を代替するものではなく、通常業務の補助的ツールとして活用する方針も示した。
背景
庁内の公式文書だけを参照して回答するナレッジベース型は、外部情報に基づく回答よりも根拠と情報範囲を絞り込みやすく、誤った回答の抑制やアクセス統制などセキュリティ確保と一体で進めやすい方式とされる。当社データベースでは、過去1年(2025年7月以降のデータ)で「生成AI」と「実証」の両方に言及した議会関連記録が137自治体で確認されている。
出典:
- 知立市議会 2026年3月5日 定例会 本会議(動画: https://www.youtube.com/watch?v=cc1b6eH8wCI&t=1423s / 該当箇所 23:43頃〜)
- 尾張旭市議会 2026年3月5日 定例会 本会議(議会中継の字幕データより・該当箇所 28:55頃〜)
- 恵那市議会 2026年3月18日 定例会 本会議(議会中継の字幕データより・該当箇所 28:41頃〜)
- 唐津市議会 2026年3月9日 定例会 本会議(議会中継の字幕データより・該当箇所 24:49頃〜)
- 総務省「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>(第4版)」(https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei04_02000155.html)
記事中の議会での発言・答弁は、公開されている会議録・中継動画に基づいています。動画リンクは公開元の都合により視聴できなくなる場合があります。