自治体のサイバーセキュリティ対策——病院のICT-BCP整備と議会情報システムの防御

関連自治体: 埼玉県さいたま市 / 富山県富山市 / 東京都調布市

さいたま市は2026年3月9日の市議会委員会の総括質疑で、サイバー攻撃に特化した「ICT-BCPサイバー攻撃編」を策定し、被害時の復旧手順を庁内に周知していると明らかにした(副市長答弁)。

医療機関を標的にしたサイバー攻撃で診療が長期停止する事案が相次ぐ中、2026年3月の議会では自治体病院を含む全庁的な備えを問う質疑が続いた。当社データベースでは、過去1年(2025年7月以降のデータ)で「病院」と「サイバー攻撃」の両方に言及した議会答弁関連の記録が14自治体で確認されている。

病院のサイバー対策——さいたま市・富山市

  • さいたま市(2026年3月9日・委員会総括質疑・副市長): 総務省ガイドラインに基づく「さいたま市ICT-BCP基本計画書」に加え、同ガイドラインが大地震を主対象とすることから、サイバー攻撃に特化した「サイバー攻撃編」を別に策定済み。研修・訓練による最新の攻撃手法の周知と、同編の見直しを続けると答弁した。
  • さいたま市立病院(2026年3月4日・委員会審査・情報管理室長): 医療情報システムはインターネットや市の業務ネットワークと接続しない独立構成が第一の防御と説明。他病院の被害はベンダー保守用回線からの侵入が多いとの認識を示し、外部接続機器のプログラム更新やパスワード強化を実施していると述べた。バックアップはテープの遠隔保管を実施し、サイバー保険には未加入と説明した。
  • 富山市(2026年3月11日・本会議一般質問・企画管理部長、病院事業局管理部長): 情報セキュリティポリシーでサイバー攻撃をインフラ障害・自然災害と並ぶ脅威と位置づけ、ネットワークの3層分離やCSIRTの設置を答弁した。病院事業局は、他県の病院で保守用VPN回線を介したランサムウェア侵入事案が公表されたことを踏まえ、受託事業者への回線・管理体制の調査義務付けと作業時間外の回線切断を実施し、2026年度に更新予定の電子カルテシステムでオフラインバックアップと二要素認証を導入すると述べた。

医療法施行規則の改正により、2023年4月から医療機関のサイバーセキュリティ対策確保が義務化された。厚生労働省は「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」への準拠とチェックリストによる点検を求めている。自治体病院は自治体の情報セキュリティと医療機関の安全管理の両方の文脈で対策を問われており、各議会の質疑もこの2軸で行われた。

議会情報システムの防御——調布市

東京都調布市議会は2026年1月26日の議会運営委員会で、会議システムのID等の漏洩・不正使用事案の再発防止策として「調布市議会情報セキュリティポリシー」の案文作成を進めていると報告した(議会事務局説明)。施行日は2026年4月1日を予定する。

議会事務局が同委員会で説明した構成案によると、ポリシーは議会全体の取り組み指針を定める「基本方針」と、具体的なルールである「対策基準」で構成する。具体的な運用手順を定める「実施手順」は、セキュリティ上の支障を避けるため非公開とする。

従来のタブレット端末使用基準からの変更点も示した。情報資産の範囲はネットワーク・情報システムで扱う情報に加えて紙の文書まで含める。システムのパスワードは事務局指定から各議員による指定・管理へ変更する。情報セキュリティに関する重要事項を決定する会議体(議会運営委員会に出席する議員で構成する想定)を新設し、定期的な研修や監査・自己点検の規定を設ける。

再発防止の取り組みは2025年9月の委員会で「基本方針の策定」「マニュアルの見直し」「研修の実施」の3点が了承されており、今回のポリシー策定はこのうち基本方針の策定に当たる。

背景には2024年6月の地方自治法改正がある。自治体の議会および長その他の執行機関は、それぞれが管理する情報システムについてサイバーセキュリティを確保するための方針を定め、公表することが法律上義務付けられた(施行日は2026年4月1日)。議会事務局も同委員会でこの法改正を策定の背景として説明した。当社データベースでは、過去1年(2025年7月以降のデータ)で「誤送信」と「個人情報」の両方に言及した議会答弁関連の記録が8自治体で確認されている。


出典:

記事中の議会での発言・答弁は、公開されている会議録・中継動画に基づいています。動画リンクは公開元の都合により視聴できなくなる場合があります。