子育て・保育

【解説】小児科・産婦人科のオンライン相談、#8000との違いと仕組み

夜間や休日の子どもの急な発熱、産後の不安な体調——こうした場面で保護者が使える相談手段として、国の小児救急電話相談(#8000)と、自治体が住民向けに導入する民間のオンライン相談・診療サービスがある。両者は似て見えるが、対応する時間帯、費用の負担、医師が担える医療行為の範囲が異なる。導入を検討する自治体の判断材料として、制度上の区分を整理する。

小児救急電話相談(#8000)の仕組み

子ども医療電話相談事業(#8000)は、休日や夜間の子どもの急な病気に保護者がどう対処すべきか判断に迷ったとき、小児科医師や看護師に電話で相談できる国の事業である。全国統一の短縮番号「#8000」をプッシュすると、居住する都道府県の相談窓口に自動転送され、症状に応じた対処の助言や受診の要否についてアドバイスを受けられる。厚生労働省によると、事業は2004年度に始まり、2010年から全国47都道府県で実施されている。

実施時間は都道府県によって異なる。厚生労働省の案内では、一般的に平日は午後6時から翌朝8時まで、土日・休日は午前8時から翌朝8時までとされ、深夜0時以降も全47都道府県で実施している。相談料は無料で、通話料は利用者の負担となる。

#8000で行われるのは、あくまで電話による助言である。個別の患者を診察して病名を確定させたり、薬を処方したりする行為は含まない。

「相談」と「診療」は医療行為の範囲が違う

オンラインを使った医療は、厚生労働省の「オンライン診療の適切な実施に関する指針」で複数の類型に区分されている。区分の違いは、医師が個別の患者に対してどこまで医学的判断を行うかにある。

  • 遠隔健康医療相談(オンライン医療相談): 相談者の心身の状態に応じた一般的な医学的助言を行う。個別の状態を踏まえた診断や処方は伴わない。#8000のような電話相談はこの類型に近い。
  • オンライン受診勧奨: 患者個人の状態に応じた必要最低限の医学的判断を伴い、受診を勧める。ただし病名の診断や具体的な処方はできない。
  • オンライン診療: 医師と患者の間で情報通信機器を用い、リアルタイムに診察・診断・処方を行う。医療行為そのものであり、医師法上の診察に位置づけられる。

指針では、メールやチャットのみでの診療は認められず、麻薬・向精神薬の初診処方や一定日数を超える処方にも制限がある。自治体が住民向けにサービスを導入する場合、「相談」までを担うのか、診断・処方を伴う「診療」まで踏み込むのかで、必要な医師の関与や医療機関・医師会との調整の度合いが変わる。

費用負担と対象時間の考え方

#8000は公費で運営され、利用者の相談料は無料である。対象は主に休日・夜間に限られ、相談内容は助言にとどまる。一方、自治体が民間事業者のオンライン相談・診療サービスを住民向けに提供する場合、対応時間の設定や、電話・チャット・ビデオ通話といった手段、対象を小児に限るか妊産婦にも広げるかは、サービスや契約の設計によって異なる。

導入にあたっては、既存の#8000や地域の医療体制との役割分担をどう整理するかが論点になる。診断・処方を伴うオンライン診療まで含める場合は、対面診療への切り替え体制や地域の医療機関との連携が前提となる。

背景

分娩を扱う施設の減少や小児科医の不足を背景に、自治体議会では周産期・小児医療へのオンライン活用を取り上げる動きが続いている。当社データベースでは、過去1年(2025年7月以降のデータ)で「オンライン相談」または「オンライン診療」に言及し、かつ小児・母子保健に関わる議会関連の記録が82自治体で確認されている。国は妊娠・出産・産後の支援策の拡充を検討しており、相談から診療まで、どの段階をオンラインで担うかが各自治体の設計判断となる。


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