日本版ライドシェアと公共ライドシェアの違い——道路運送法78条の2号と3号

道路運送法第78条は、自家用自動車を有償で運送の用に供してはならないと定めたうえで、その例外を3つ挙げている。このうち第2号にあたるのが「公共ライドシェア」と呼ばれる自家用有償旅客運送、第3号にあたるのが2024年4月に創設された「日本版ライドシェア」(自家用車活用事業)である。名称が似ているが、運送主体も手続きも別の制度である。

日本版ライドシェア(自家用車活用事業)

根拠は道路運送法第78条第3号——「公共の福祉を確保するためやむを得ない場合において、国土交通大臣の許可を受けて地域又は期間を限定して運送の用に供するとき」である。地域交通の担い手不足と移動の足の不足に対応するため、「デジタル行財政改革 中間とりまとめ」(令和5年12月20日デジタル行財政改革会議決定)で、現状のタクシー事業では不足している移動の足を、タクシー事業者の管理の下で地域の自家用車や一般ドライバーを活用して補う仕組みを創設することが決定された。

制度の枠組みは次のとおりである。

  • 運行できるのは、国土交通省が指定する「タクシーが不足する地域、時期及び時間帯」に限られる。
  • 実施するのは法人タクシー事業者(一般乗用旅客自動車運送事業の許可を受けている者)で、地域の自家用車や一般ドライバーを活用する。
  • 車両は乗車定員10人以下

つまり、自治体が主体になる制度ではない。自治体が関わるのは、不足の実態を示す段階や、地域公共交通のあり方を協議する場面である。

公共ライドシェア(自家用有償旅客運送)

根拠は道路運送法第78条第2号で、一般旅客自動車運送事業者によることが困難であり、地域の関係者が必要であるとして協議が調った場合に、市町村や特定非営利活動法人等が自家用自動車を使用して有償の旅客運送を行える登録制度である。種類は、住民等のための「交通空白地有償運送」と、身体障害者等のための「福祉有償運送」に分かれる。交通空白地有償運送は乗車定員の規定がなく、福祉有償運送は乗車定員11人未満とされている。

実施できるのは市町村、NPO法人、一般社団法人・一般財団法人、認可地縁団体、農業協同組合、消費生活協同組合、医療法人、社会福祉法人、商工会議所、商工会、労働者協同組合、営利を目的としない法人格を有しない社団である(道路運送法施行規則第48条)。タクシー事業者も実施に協力できる。

対価は営利とは認められない実費の範囲内で、区域を定めて行う場合の対価は近隣のタクシー運賃の約8割を目安とすることとされている。

手続きの違いが実務上いちばん大きい

公共ライドシェアの導入には、地域における関係者の協議が要る。地域公共交通会議(旧「運営協議会」を含む)で、必要性、運送の区域、旅客から収受する対価に関する事項、事業者協力型を行うか否かなどを協議し、そのうえで運輸支局等に登録を申請する。登録の有効期間は2年で、重大事故を起こしていない場合等は3年、事業者協力型を行う場合等は5年となる。毎年、前年4月1日から3月末までの実績を「輸送実績報告書」に記載し、5月末までに提出する。

この協議が長期化しやすかったため、令和6年4月から運用が改められた。地域公共交通会議の主宰者である市町村長等による導入の提案について、2ヶ月の期間内に結論に至らなかった場合には、市町村長等が設置要綱に基づき自らの責任において導入の可否を最終的に判断でき、実施する旨の判断がなされた場合には協議が調ったものとみなすことができる。

運用改善はほかにも進んでおり、対価の目安を「約8割」と通達上明記したこと、株式会社が受託により参画できることの明確化、宿泊施設が所有し使用されていない時間帯の車両を実施主体に提供できること、発地または着地のいずれかが運送区域内にあればよいとする運送区域の柔軟化、通常収受する対価に対して5割増を上限・5割引を下限として柔軟に額を設定できるダイナミックプライシングの導入などが通達上明記されている。

「交通空白」解消本部

国土交通省は令和6年7月17日、タクシー、乗合タクシー、日本版ライドシェアや公共ライドシェア等を地域住民や来訪者が使えない「交通空白」の解消に向けて、国土交通大臣を本部長とする「交通空白」解消本部を設置した。同本部の資料では、日本版・公共ライドシェアを実施済みまたは実施に向けて準備中の自治体が約1,100、未着手の自治体が約600とされ、未着手の自治体への伴走支援を進めるとしている(いずれも令和6年10月時点の資料による)。

当社データベースでは、過去1年(2025年8月以降のデータ)で「ライドシェア」に言及した議会答弁関連の記録が218自治体で確認されている。


出典:

  • 国土交通省 関東運輸局自動車交通部旅客第二課「日本版ライドシェア、公共ライドシェア等について」(令和6年10月2日・がんばる地域応援プロジェクト2024 第4回勉強会)(https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/content/000334295.pdf
  • 国土交通省 関東運輸局「日本版ライドシェア(自家用車活用事業)」(https://wwwtb.mlit.go.jp/kanto/jidou_koutu/tabi2/jikayo/katsuyou.html
  • 当社データベース集計: 2025年8月以降の議会答弁関連記録を対象に「ライドシェア」に言及した記録を集計(218自治体・513件)