デマンド交通、「実証の結果」と「導入前夜」——6市町の議会答弁

関連自治体: 奈良県橿原市 / 大阪府藤井寺市 / 岩手県八幡平市 / 神奈川県小田原市 / 山梨県甲府市 / 宮城県加美町

デマンド交通をめぐる自治体議会の答弁は、実証運行の結果を踏まえて継続・転換を判断する段階と、AIオンデマンド交通の導入に向けて公募・予算・実装スケジュールを詰める段階の両方が並行して進んでいる。奈良県橿原市は2026年3月5日の市議会建設常任委員会で、実証3年目に定時定路線型からデマンド型へ刷新した地区の運行結果を報告した。3ヶ月間の延べ利用者は651人で、2024年度の409人、2023年度の125人を大きく上回った。

実証の結果——橿原・藤井寺・八幡平

各市の表明

  • 橿原市(2026年3月5日・建設常任委員会・市側報告): デマンド型への刷新で運行効率の向上と利用者数の増加を両立できたと総括。
  • 藤井寺市(2026年3月19日・本会議一般質問・都市整備部長): デマンド型乗合タクシーの利用者アンケートで総合満足度は約7割。運行計画を一部変更し2026年度も実証運行を継続。
  • 八幡平市(2026年3月6日・本会議一般質問): デマンド型試験運行の利用は1日平均11.4人で想定20.8人を下回ると市が報告。他地区への展開は検証後に検討。

橿原市の刷新後の運行は、エリア内に乗降ポイント48箇所を設け、タクシー1台・1乗車300円で実施した。事前設定した目標値777人に対する達成率は83.8%にとどまったものの、運行台数の減少と運行時間の短縮を加味すると、1台1時間あたりの利用者数は前年度の3倍以上になったと報告した。

藤井寺市の都市整備部長は、2025年10月開始の実証で見えた課題への対策として、停留所の新設・廃止、運行ルートの再編、運賃の改定(大人200円から300円、小児100円から150円)、1便あたり3台の上限設定を挙げた。市長は2026年度の市政運営方針でも実証継続を表明している。

八幡平市は、予約が難しいという意見と便利だという意見の両方があるとし、予約方法の周知を進めると答弁した。別地区への導入は、現行地区の実証で利便性・効率性・運行コストの妥当性を検証したうえで検討するとした。

背景

2023年10月に全面施行された改正地域公共交通活性化再生法は、自治体と交通事業者などの連携による地域交通の「リ・デザイン」(再構築)を掲げ、実証運行とその検証は再構築の標準的な手順になっている。当社データベースでは、過去1年(2025年7月以降のデータ)で「デマンド型」と「実証運行」の両方に言及した議会答弁関連の記録が32自治体で確認されている(時点: 3市の報告・答弁はいずれも2026年3月議会)。

導入前夜——小田原・甲府・加美

神奈川県小田原市は2026年2月20日の市議会建設経済常任委員会で、AIオンデマンド交通の実証運行に向け、令和8年3月に国の補助へ応募し、4月から事業者を公募、6月定例会で補正予算を上程したうえで11月に実証運行を開始する日程を都市部長らが説明した。

各市の表明

  • 神奈川県小田原市(2026年2月20日・建設経済常任委員会・都市部長): 路線バスの減便や廃止が懸念される地区での移動手段確保を優先し、AIオンデマンド交通の実証運行を検討すると説明した。運行事業者の選定は公募型プロポーザル方式で実施し、運行事業者を含むシステム等を一括で提案させる想定だと述べた。地域交通課副課長は、応募する国の交通空白解消の緊急対策事業について、補助率は上限1億円で3分の2、単年度限りで事業期間は2月末までと答弁した。
  • 山梨県甲府市(2026年3月4日・本会議・リニア交通政策官): 令和5年度から実証運行してきたデマンドタクシーで、令和6年度よりAIを活用したシステムを導入し、当日予約への対応や運行ルートの最適化を進めていると答弁した。今年度の実証結果を踏まえ、既存公共交通への影響を見極めるにはさらなる利用実績が必要と判断し、令和8年度に各地区公共交通協議会との連携を強化して再度実証運行を実施する予定だと述べた。
  • 宮城県加美町(2026年2月20日・本会議一般質問・町長): 予約制の乗り合いバスをAIオンデマンドバスに切り替える実証運行で、従来は前日午後5時までだった予約締切を当日始発の1時間前までに短縮したと答弁した。AI技術が配車ごとに乗降順やルートを自動作成するため実現したとし、実証開始から2ヶ月で新規利用者登録が36名増え、1月末時点の登録者は270名になったと述べた。

背景

国土交通省は「交通空白」解消等リ・デザイン全面展開プロジェクトを進め、公共ライドシェアやAIオンデマンド交通の導入を支援している。緊急対策事業の補助率は500万円まで定額、超過分は3分の2で上限1億円とされ、基礎データ収集やシステム構築、車両導入が対象となる(国土交通省)。地方では路線バスの減便が続き、当日予約や運行ルート最適化を担うAI活用が実装段階に入りつつある。当社データベースでは、過去1年(2025年7月以降のデータ)で「AIオンデマンド交通」と「実証運行」の両方に言及した議会関連記録が31自治体で確認されている。


出典:

記事中の議会での発言・答弁は、公開されている会議録・中継動画に基づいています。動画リンクは公開元の都合により視聴できなくなる場合があります。