【札幌市】飲食店支援クラウドファンディング事業、JTB北海道事業部が僅差で受注——分かれ目は「危機管理体制」

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札幌市は2022年5月18日、公募型プロポーザル「令和4年度札幌市飲食店の未来応援事業運営業務」の企画競争実施委員会を開催し、株式会社JTB北海道事業部を契約候補者として選定した。応募事業者は2社のみで、審査は7名の委員による総合点数方式で行われた。公表された採点表からは、独自提案やクラウドファンディングの企画そのものではなく、実施体制と危機管理体制の評価で大きな差がついたことが読み取れる。

何が審査されたか

札幌市が公表した「公募型プロポーザルによる選定結果について」によると、審査対象事業者は株式会社JTB北海道事業部と、選定結果公表資料で社名を伏せられた「B社」の2社である。審査基準は、提案説明書に示す評価項目による総合点数方式とし、委員会委員の評価の合計点数が高い順に契約候補者とする方式だった。総合得点の満点の6割にあたる420点を最低基準点とし、これに満たない場合は提案者が1者であっても契約候補者としない、との条件も明記されている。

採点は委員7名で行われ、評価項目は「業務執行能力」3項目、「企画提案内容」4項目の計7項目、満点は700点(1委員あたり100点)である。内訳と結果は以下のとおりだった。

区分評価項目委員1名あたり配点満点(7名)JTB北海道事業部B社
業務執行能力執行体制2014011696
業務執行能力危機管理体制2014012092
業務執行能力類似業務の実績10704856
企画提案内容企画の方向性10705452
企画提案内容飲食店・市民への事業の周知2014011296
企画提案内容クラウドファンディングにおける工夫10704242
企画提案内容独自提案10704246
合計100700534480

最低基準点は420点で、両社とも上回った。合計点はJTB北海道事業部534点、B社480点で、54点差がついた。

どこで差がついたか

項目ごとの得点差を見ると、JTB北海道事業部が優位に立ったのは「危機管理体制」(28点差)、「執行体制」(20点差)、「飲食店・市民への事業の周知」(16点差)の3項目である。この3項目の差の合計は64点にのぼり、合計点差54点を上回る。

一方、B社が上回った項目もある。「類似業務の実績」(8点差)と「独自提案」(4点差)はB社の得点がJTB北海道事業部を上回っており、「クラウドファンディングにおける工夫」は42点で同点だった。企画の方向性はJTB北海道事業部がわずかに上回るが、2点差にとどまる。

この採点結果からは、本件の勝敗は「独自の企画アイデア」や「クラウドファンディングの仕組みそのものの工夫」ではなく、実施体制の堅牢さと、想定されるトラブルへの備え、事業の周知力で分かれた可能性があると読み取れる。B社は類似業務の実績や独自提案では評価されたものの、体制面の評価で挽回できなかったと考えられる。

なお、委員の所属・肩書(庁内委員か外部委員か、学識経験者か実務家かなど)については、選定結果公表資料に記載がなく、公開資料からは確認できない。委員会の設置要綱や会議録についても、本記事執筆時点(2026年7月14日)で確認できる公開資料の範囲には含まれていなかった。同様に、募集要領・仕様書についても本記事の調査範囲では確認できておらず、事業の詳細な要求水準や契約金額は選定結果公表資料には記載がない。

事業の規模感——別文書に残る実績報告から

選定結果公表資料そのものには事業費・契約金額の記載がないが、札幌市が別途公表している「新型コロナウイルス対応地方創生臨時交付金 実施状況及び事業の効果等【令和3年度】」には、同じ事業名「飲食店の未来応援事業」(担当部局・産業振興部)の実施結果が記載されている。これによると、事業期間は2021年10月から2022年3月まで、実施計画上の総事業費は2億円、決算額は1億9,907万9千円だった。

実施状況としては、購入型クラウドファンディングで約4.5億円の支援を集め、プレミアム分として約1.3億円を上乗せし、合計約5.8億円を参加飲食店1,360軒に支援したと記載されている。

ただし、この実施結果は令和3年度(2021年度)分の実績報告であり、事業者名は記載されていない。今回取り上げた選定結果は令和4年度(2022年度)分の運営業務にかかるものであるため、両文書は同一事業名の異なる年度の記録であって、令和3年度の実施を担った事業者が誰であったかは、この実施結果の公開資料からは確認できない。令和4年度についても、選定結果公表資料にあるのは審査委員会が2022年5月18日に開催され契約候補者としてJTB北海道事業部を選定した事実までであり、実際の契約金額や令和4年度の実施結果(支援総額・参加店舗数等)は、本記事執筆時点で公表されている資料からは確認できない。

この案件から学べるポイント

  • 体制・危機管理の説明は独自提案と同等以上に重要である。本件では独自提案やクラウドファンディングの工夫では大差がつかなかった一方、執行体制・危機管理体制・周知計画という「実施を確実にやり切れるか」を問う3項目だけで、合計点差54点を上回る64点分の差がついた。提案書では、企画の目新しさだけでなく、想定されるトラブル(申込殺到、システム障害、クレーム対応等)への具体的な対応フローを明記することが有効と考えられる。
  • 最低基準点の設計を確認する。本件は満点の6割(420点)を最低基準点とし、これを下回れば1者応募でも失格とする条件だった。総合点方式であっても、足切り基準がある案件では、特定項目で著しく低い評価を受けないよう、全項目に一定の水準で対応する提案構成が求められる。
  • 「飲食店・市民への事業の周知」のような対象者への周知計画は独立した配点項目になり得る。本件では単独で140点(全体の20%)を占めており、広報・周知の具体策を提案書に明記したかどうかが点差に直結した可能性がある。
  • 選定結果の公表資料だけでは契約金額や実施実績までは分からないことが多い。本件でも契約金額は選定結果公表資料に記載がなく、実施結果は別文書(交付金の実施状況報告)にしか残っていなかった。同種の事業を提案する企業は、対象自治体が別途公表している予算資料・決算資料・交付金実施報告等も横断的に確認することで、事業規模や過去の実績水準をより正確に把握できる。

参考資料

出典

記事中の議会での発言・答弁は、公開されている会議録・中継動画に基づいています。動画リンクは公開元の都合により視聴できなくなる場合があります。