【札幌市】ワークトライアル事業プロポーザル、配点最大「事業の実現性」で劣勢でも僅差10点で逆転

関連自治体: 北海道札幌市

札幌市経済観光局雇用推進部は2022年1月17日、新卒者およびおおむね50歳以下の求職者・非正規社員を対象とした就職支援事業「令和4年度ワークトライアル事業運営業務」の公募型プロポーザルを開始した。応募したのは株式会社東京リーガルマインド札幌支社とキャリアバンク株式会社の2社で、同年2月15日の選考委員会でともに選定された。両社の総合得点差はわずか10点(500点満点)であり、配点が最も大きい評価項目で劣勢だった事業者が、他の項目の積み上げで総合順位を逆転していた。

案件の概要

事業は、さっぽろ圏12市町村(札幌市・小樽市・岩見沢市・江別市・千歳市・恵庭市・北広島市・石狩市・当別町・新篠津村・南幌町・長沼町)の求職者を対象に、座学研修と最大1ヶ月間の職場実習を通じて正社員就職を支援する内容である。就職氷河期世代(36歳以上)については研修生の3割以上を目標とすることが仕様書に明記されており、対象人数は第1期35人以上、第2期30人以上、合計65人以上とされた。

事業費は提案事業1件当たり33,292,120円(税込)を上限とし、これとは別に研修生に支払う研修給付金9,707,880円(不課税)が用意された。合計すると1件当たり4,300万円の予算枠であり、委託費と研修給付金を課税・不課税で会計区分している点が仕様書から読み取れる。研修給付金は実習時間1時間当たり889円(北海道の最低賃金に連動)、実習日数は研修生1人当たり21日、1日8時間以内と定められている。

応募資格は、札幌市内に活動拠点(本社または営業所等)を有すること、共同企業体(JV)での応募を認めないことなどが実施要領に明記されている。

審査体制と評価基準

審査は「ワークトライアル事業企画競争実施委員会」が実施した。企画提案実施要領の配点(委員1名当たり)から逆算すると、委員は5名で構成されていたと確認できる。委員の所属・職種・外部委員か庁内委員かは、公開されている実施要領・選定結果には記載がなく、公開資料からは確認できない。

応募が7者以上の場合は書面審査で上位6者に絞ったうえでプレゼンテーション審査に進む規定だが、今回は応募が2社にとどまったため書面審査は行われず、2社ともプレゼンテーション審査(2022年2月15日、持ち時間35分=説明15分・質疑20分)に進んだ。

評価項目と配点(委員1名当たり)は次のとおりである。

評価項目配点(委員1名)満点(委員5名)内容
事業の妥当性20点100点事業趣旨・目的への適合、目標設定水準、研修内容の妥当性など
事業の実現性55点275点募集・選考方法、研修環境、事業経費と人件費のバランス、運営体制など
事業の効果25点125点実施効果、モチベーション維持、就職・定着への寄与など
合計100点500点

配点の内訳を見ると、「事業の実現性」が全体の55%を占め、単独で最大の評価項目となっている。実施要領上、実現性の審査対象には「研修環境(ハード、ソフト面)」「事業経費と人件費のバランス」「運営体制」が含まれており、机上の企画の独自性以上に、実行体制の具体性が重視される設計であることが読み取れる。総合得点満点の6割(300点)が最低基準点と定められ、これに満たない場合は契約候補者としない規定である。

採点結果と勝敗の分かれ目

審査の結果、両社とも最低基準点(300点)を上回り、契約候補者として選定された。

評価項目満点東京リーガルマインド札幌支社キャリアバンク
事業の妥当性100点77点71点
事業の実現性275点206点208点
事業の効果125点92点86点
合計500点375点365点

総合順位は東京リーガルマインド札幌支社が10点上回った。項目別に差を分解すると、配点最大の「事業の実現性」ではキャリアバンクが2点上回っていた。しかし「事業の妥当性」で東京リーガルマインドが6点、「事業の効果」でも6点それぞれ上回り、合計12点差が実現性の2点差を打ち消す形で、総合順位が逆転していたことになる。配点比率が最も大きい項目で劣勢であっても、他の複数項目の小さな積み上げで総合順位が変わり得ることが、この採点表から読み取れる。

なお、応募事業者数と選定枠数がともに「2」で一致していたため、実質的に不合格リスクは低い案件だったとみることもできるが、規定上は最低基準点(300点)に満たない事業者がいれば選定対象から外れる仕組みであり、応募すれば自動的に選定される性質のものではない。

翌年度にみる継続性

公開されている選定結果によると、翌年度の「令和5年度ワークトライアル事業運営業務」でも、審査対象となった事業者は東京リーガルマインド札幌支社とキャリアバンクの同じ2社だった。2023年3月10日の選考委員会では、配点(委員1名当たり)は令和4年度と同一(妥当性20点・実現性55点・効果25点、合計100点)だったが、委員が6名に増え、満点は600点(最低基準点360点)に変わっている。得点は東京リーガルマインドが449点(妥当性86・実現性247・効果116)、キャリアバンクが475点(妥当性92・実現性256・効果127)で、令和4年度とは逆にキャリアバンクが26点上回る結果となった。

同一自治体・同一事業であっても、審査に参加する委員の人数や年度ごとの総合順位が固定されていないことが、この2年分の公開資料から確認できる。前年度に選定された実績が翌年度の優位を自動的に保証するものではないと読み取れる。

この案件から学べるポイント

  • 配点比率が最も大きい評価項目(本件では「事業の実現性」55%)で優位に立てなくても、他の複数項目における小さな差の積み上げによって総合順位が逆転し得る。提案書は特定の項目に偏らず、全項目でバランスよく完成度を高める設計が有効である。
  • 「事業の実現性」の審査対象には運営体制・研修環境・経費と人件費のバランスが含まれる。企画の独自性だけでなく、実行体制の具体性を数値・組織図等で示すことが、配点上最も重い項目の得点に直結する。
  • 事業費が課税対象の委託費と不課税の給付金枠に分かれているなど、仕様書の会計区分を正確に読み込むことが、積算の抜け漏れを防ぎ、実現性評価にも影響する。
  • 応募数と選定枠数が一致している案件でも、最低基準点に満たなければ選定されない規定である。競争が少ない案件であっても、採点そのものは通常どおり実施される前提で提案の質を作り込む必要がある。
  • 同一自治体・同一事業でも、審査委員の人数や年度ごとの得点順位は変動し得る。過去の受託実績は有利な材料にはなり得るが、順位を保証するものではなく、毎回の提案内容の作り込みが求められる。

参考資料

出典

記事中の議会での発言・答弁は、公開されている会議録・中継動画に基づいています。動画リンクは公開元の都合により視聴できなくなる場合があります。