設計プロポーザルとは——コンペとの違いは「案」ではなく「設計者」を選ぶこと

庁舎・学校・文化施設など公共建築の設計者を選ぶ場面で広く使われているのが、公募型プロポーザル方式である。同じく提案を審査して決める方式に設計競技(コンペ)方式があるが、両者は「何を選ぶか」がそもそも異なる。プロポーザル方式は、価格による入札とは別の枠組みにある随意契約の相手方を特定する手続きであり、その法的な位置づけの詳細はプロポーザル方式と総合評価落札方式は何が違うのかに譲る。本稿では、国土交通省・全国営繕主管課長会議のマニュアルと自治体の実施要領に基づき、設計分野に固有の論点——コンペとの違い、技術提案書で問われる中身、参加要件と審査の流れ——を整理する。

なぜ設計業務は価格競争になじまないのか

国土交通省・全国営繕主管課長会議が定めた「建築設計業務委託の進め方——適切に設計者選定を行うためのマニュアル——」(平成30年5月)は、設計者選定の基本的な考え方をこう説明する。「建設される施設の質やコスト等は設計者によって大きく左右されることになります(完成した製品を実際に見て選んで購入することができる物品購入・調達とは異なります)。したがって、発注者が設計業務を委託する場合には、設計者の創造性、技術力、経験等を適正に審査の上、その設計業務の内容に最も適した設計者を選定することが極めて重要です」。

これを受けて同マニュアルは、プロポーザル方式を次のように定義する。「当該業務の内容が技術的に高度なもの又は専門的な技術が要求される業務であって、提出された技術提案に基づいて仕様を作成する方が優れた成果を期待できる場合に選定します」。そのうえで「この方式は、具体の『設計案』を選ぶものではなく、技術提案を評価し、『ひと(者)』を選ぶもので、契約形態としては随意契約となります(会計法第29条の3第4項、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号)」と整理している。

同マニュアルはさらに、建築士法第3条・第3条の2により一定の用途・規模・構造の建物では一級建築士または二級建築士による設計が義務づけられている点を挙げ、「一級建築士又は二級建築士が行うことが義務づけられている設計業務や大規模な改修に関する設計については、プロポーザル方式によって設計者を選定することが適当です」としている。

なお、公共工事の品質確保を定めた品確法(公共工事の品質確保の促進に関する法律)は令和元年6月7日に改正が成立し、6月14日に施行された。国土交通省の説明資料によれば、この改正では「公共工事に関する調査等(測量、地質調査その他の調査(点検及び診断を含む。)及び設計)について広く本法律の対象として位置付け」る規定が加えられている。工事そのものだけでなく、その前段階である調査・設計の品質確保も、法律上の基本理念・発注者責務の対象として明記された。

コンペ方式との違い——「案」を選ぶか、「者」を選ぶか

前述のとおり、プロポーザル方式は具体の設計案ではなく設計者を選ぶ手続きである。これに対し設計競技(コンペ)方式について、前掲マニュアルは次のように説明する。「設計競技方式は、当該建築設計業務に象徴性、記念性、芸術性、独創性、創造性等を求められるプロジェクトで、その性質上具体的な設計案を審査し、最も優れた設計案に基づいて基本設計・実施設計を進めることが適切とされる場合に選定します」。象徴性・記念性の高い施設を想定した方式であり、選ばれた設計案がそのまま基本設計・実施設計へ進むことが前提になっている。

同マニュアルの選定方式比較表は、コンペ方式の留意点として「応募者は具体的な設計案を提出するため、応募者に一定の負担が生じる」「発注者として、応募及びこれに関連する審査について整理をする必要がある」ことを挙げている。案そのものを審査対象とする以上、応募者側には設計案を作り込む負担が、発注者側には審査体制を整える負担が、それぞれプロポーザル方式より大きくかかる構造である。

この違いは、プロポーザル方式における技術提案の扱いにも表れている。同マニュアルは「プロポーザル方式は、当該プロジェクトに関する具体的な設計案を選ぶものではないため、評価テーマの設定にあたっては、具体の設計案を参照しなければ評価できないようなものとならないように(具体的な平面計画を求めない、建物の具体的形状の表現を求めない、など)することが必要です」としたうえで、「そもそも技術提案として、平面図、外観透視図、模型等を含めた具体的な設計案を求めることはプロポーザル方式の範疇を超えるものであると考えられます」と明記している。プロポーザル方式の技術提案書は、あくまで実施方針や取り組み方を問うものであり、コンペ方式のように完成形に近い設計案を競わせるものではない。

なお、価格以外の要素も含めて評価する調達方式には、随意契約ではなく一般競争入札の枠内にある総合評価落札方式もある。プロポーザル方式との違いはプロポーザル方式と総合評価落札方式は何が違うのかで詳述している。

技術提案書で問われるもの

前掲マニュアルが示す「プロポーザル方式の特定段階における評価項目及び得点配分の設定例」は、大きく3つの評価項目で構成される。

  • 資格——専門分野(総合・構造・電気・機械)の主任担当技術者が保有する資格。一級建築士・二級建築士等、資格の水準に応じて評価点にウェイトがかかる。
  • 技術力——管理技術者・主任担当技術者が過去に完了させた同種または類似業務の実績、業務成績評定(過去の発注者評価)、CPD(継続的能力・職能開発)の取得単位数。
  • 業務実施方針及び手法——「業務の理解度及び取り組み意欲」「業務の実施方針」「評価テーマに対する技術提案」の3点。同マニュアルの設定例では、この項目群が配点全体の65%を占める。

「業務の実施方針」で問われる内容について、同マニュアルは「業務への取組体制、設計チームの特徴、特に重視する設計上の配慮事項等(評価テーマに対する内容を除く。)についての的確性、独創性、実現性等を総合的に評価します」としている。また「評価テーマに対する技術提案」は、発注者が業務内容に応じて設定する1〜3テーマ程度の具体的な検討課題(重点的に整備すべき項目に関することが適当とされる)に対し、応募者が取組方法を提示するものである。同マニュアルが示す評価テーマの設定例には、景観との調和、施設配置・動線計画、環境負荷低減、耐震改修時の執務環境維持といった分野が挙げられている。

技術提案書の評価にあたっては、書面審査に加えてヒアリングが実施される。同マニュアルによれば、国土交通省官庁営繕では「提出された技術提案書を特定する段階において……『業務実施方針及び手法』を評価するために、ヒアリングを実施」しており、地方公共団体では公開によるヒアリングを行っている例もあるという。ヒアリングでは提出済みの技術提案書の内容確認に限定され、それ以外の資料の使用は認められない運用とされている。

参加要件と審査の流れ

参加資格条件についても、前掲マニュアルは国土交通省官庁営繕の運用を示している。資格面では、管理技術者が一級建築士を保有していることを必須条件とし、これを満たさない場合は失格となる。技術力面では、管理技術者及び主任担当技術者について、過去10年間に完了した同種または類似業務の実績を求めており、実績の対象は国や地方公共団体の発注に限らず民間発注も認められている。実績として認める建築物の範囲(用途・規模等)は、条件を厳しくしすぎると応募者を過度に絞り込んでしまうため、必要な技術力が担保される範囲で極力広く設定するとされている。

自治体の実施要領でも、同様の要件が定められている。静岡市が公開する「プロポーザル方式による建築設計候補者選定要領」(制定:平成15年7月1日、最新改正:令和8年4月1日)は、参加資格として、地方自治法施行令第167条の4の規定に該当しないこと、建築関係建設コンサルタント業務の認定を受けていること、一級建築士事務所の登録を受けていること、対象業務に配置可能な技術職員を有すること、指名停止期間中でないことを定めている(第3条)。同種・類似業務の実績については、建設業者等選定委員会等が業務特性に応じて参加資格として定めることができる任意の要件とされている。

審査の流れは、公募型プロポーザル方式の場合、おおむね次の手順で進む(前掲マニュアルの実施手順より)。

  1. 参加資格条件・選定基準・特定基準の決定(建設コンサルタント選定委員会)
  2. 手続開始の公示、説明書の交付
  3. 参加表明書の提出(公示から10日程度)
  4. 技術提案書提出者の選定——参加表明書を審査し、原則として3〜5者程度に絞り込む
  5. 選定通知・技術提案書提出要請書の送付
  6. 技術提案書の提出(公募型では選定通知から40日以上を確保)
  7. ヒアリングの実施
  8. 技術提案書の評価・評価決定(建設コンサルタント選定委員会)
  9. 技術提案書の特定・通知、予定価格の範囲内での契約交渉、契約締結

同マニュアルが示す標準的なフロー図では、公募型プロポーザル方式の全体所要日数は約50〜100日間とされている。静岡市の要領も同様の二段階構成で、技術資料の審査(一次審査)で原則5者を技術提案書提出者として選定し、必要に応じたヒアリングを含む技術提案書の評価(二次審査)を経て設計候補者を特定する(第9条・第13条)。

特定されなかった応募者への対応も制度化されている。前掲マニュアルによれば、特定されなかった者には理由(非特定理由)を書面で通知し、応募者はその理由についてさらに説明を求めることができる。一方、特定後に公表される情報——特定した事業者名や各者の技術評価点——の公表範囲や、審査委員名の公表・非公表の扱いは、発注者ごとに運用が異なるとされている。

実例で見る審査——採点はどこで差がつくか

以下は設計案件に限らず、公募型プロポーザル方式の審査全般に共通する得点構造の実例である。

港区の広聴システム再構築プロポーザルは、書類審査で1,578点対1,477点とリードしていた事業者が、二次審査のプレゼンテーション・ヒアリングで20点差の逆転を許した。得点差が最も開いたのは「提案の発展性」という1項目だった。書類段階の優位がプレゼンテーションの出来で覆り得ることを示す事例である。

山梨県の若手料理人成長支援業務プロポーザルでは、価格点は応募3者とも満点で並び、実質的な勝負は提案内容の評価項目で決着した。単一の突出した項目で決まったわけではなく、加重倍率の重い複数の項目でわずかな差を積み重ねた結果が総合点を分けている。

徳島県美馬市の観光魅力発信委託業務プロポーザルは総合得点93点対88点という僅差5点で決着し、コスト評価では次点事業者が上回っていたにもかかわらず、「提案内容の効果」という1項目の4点差が最終的な明暗を分けた。

評価基準の読み込み方や、自治体の計画・地域の実情への提案の適合のさせ方については、プロポーザルで上位評価を得るにはで詳しく解説している。

これらの事例に共通するのは、価格やコスト評価だけでは差がつきにくく、提案内容の評価項目——実現性・発展性・地域への理解——の積み重ねが最終順位を左右している点である。設計プロポーザルにおいても、技術提案書とヒアリングでの説明力が審査の帰趨を分ける構造は変わらない。

参考資料

  • 全国営繕主管課長会議「建築設計業務委託の進め方——適切に設計者選定を行うためのマニュアル——」(平成30年5月・PDF・https://www.mlit.go.jp/common/001236353.pdf /取得日2026年8月15日)
  • 国土交通省「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」(平成27年11月、令和5年3月一部改定・PDF・https://www.mlit.go.jp/tec/content/001598728.pdf /取得日2026年8月15日)
  • 国土交通省「公共工事の品質確保の促進に関する法律の一部を改正する法律 説明資料」(令和元年6月7日成立・6月14日施行・PDF・https://www.mlit.go.jp/common/001299548.pdf /取得日2026年8月15日)
  • 静岡市「プロポーザル方式による建築設計候補者選定要領」(制定:平成15年7月1日、最新改正:令和8年4月1日・https://www.city.shizuoka.lg.jp/youkou/s6759/s011960.html /取得日2026年8月15日)

出典