【山梨県】情報発信力強化業務プロポーザル——採点表で見る33.2点差の中身

関連自治体: 山梨県

山梨県は2025年5月20日、「情報発信力強化業務委託」の公募型プロポーザルで株式会社プラップジャパンを委託候補者に決定した。県が公表した選定結果一覧表と審査委員会の会議録・審査基準を突き合わせると、6社の応募が1次審査(書面)で4社に絞られ、最終審査では総合433.90点対400.70点、点差33.2点で決着したことが確認できる。配点表と委員の評価コメントを重ねると、価格点は4社がほぼ横並びだった一方、「業務共通」「委託業務の実施体制」という2項目で明暗が分かれたことが読み取れる。

案件の概要

契約名は「情報発信力強化業務委託契約」。予算上限額は19,095,175円(税込)、契約期間は契約締結日から2026年3月31日までである。公募開始は2025年4月9日、企画提案書提出期限は同年5月9日、審査会は同年5月20日に設定された。応募資格には地方自治法施行令第167条の4の非該当、会社更生法・民事再生法手続き中でないこと、指名停止期間中でないこと、暴力団排除条例に該当しないことなどが列挙されている。

仕様書によると、業務内容はメディアリストの作成、プレスリリースの作成・配信(月2件程度)、メディアアプローチ(配信100媒体程度・個別アプローチ10媒体程度/案件)、メディアキャラバン(年2回以上・10社以上)、ニュースレター作成(10回程度)、露出調査・月次報告書作成(11件)、戦略的コンサルティングである。契約金額は基本額14,272,500円(税込)で、これに加えて最大4,757,500円の成果報酬が上乗せされる仕組みが採用された。仕様書の成果指標条項によれば、広告換算値が契約額(19,095,000円)以上となった場合に成果報酬満額(年間4,773,750円)を支払うと定められており、契約基本額の約25%を成果連動部分とする設計である。

審査体制——庁内2名・外部3名の5人体制

審査を担ったのは「山梨県公募型プロポーザル方式事業者選定等委員会・情報発信力強化業務委託に係る企画提案審査委員会」である。設置根拠は山梨県附属機関の設置に関する条例第2条第2項、設置日は2025年5月8日、契約締結日をもって廃止する期限付きの組織として運営要綱に定められている。

委員は5名で、県庁内部から2名(高度政策推進局次長、同局広聴広報グループの広聴広報監)、外部専門家から3名(税理士事務所代表、シンクタンクの調査研究部長、大学教授)で構成された。会長は互選により県庁内部委員(次長級)が務めている。会議録によれば、審査は公正性確保とノウハウ流出防止を理由に非公開とされ、山梨県情報公開条例第8条に基づく非公開理由が議題ごとに明記されている。ただし審査結果(5人の合計点・項目別内訳・委員コメント)と会議録要旨は事後に公表する運用が、審査当日に事務局から委員へ説明されている。

審査は2段階だった。1次審査(2025年5月16日、書面)で6社(A〜F社の符号)の中から上位4社を選抜し、2次審査(同年5月20日、Microsoft Teamsによるオンラインプレゼンテーション、持ち時間1者30分)で最終順位を決定している。選定結果一覧表には「企画提案者の符号は、一次審査の符号と必ずしも一致するとは限りません」との注記があり、1次・2次の符号を単純には対応付けられないことが明示されている。次点以下の3社は選定結果一覧表・審査結果ともに「D社」「E社」「F社」と符号のみで公表されており、県自身が実名を公表していない。

採点表の設計——係数配点と失格基準

審査基準によれば、評価は審査員1名につき100点満点で、評価点(0〜5点の6段階)に評価項目ごとの係数(2〜5)を掛けて配点を算出する方式である。委員5名の合計は最大500点となる。

評価項目評価点×係数配点
提案方針5点×210点
業務共通5点×525点
メディアキャラバン5点×210点
メディアアプローチ5点×420点
戦略的コンサルティング等5点×210点
委託業務の実施体制5点×315点
費用対効果(価格点)5点×210点
合計100点

係数の大きさを見ると、山梨県が最も重視したのは「業務共通」(専門知識・実績・メディアネットワークを問う項目、係数5)で、次いで「メディアアプローチ」(露出獲得プロセスの具体性、係数4)である。価格点の係数は2で、提案方針・メディアキャラバンと並ぶ扱いにとどまり、価格競争力よりも実績とプロセスの具体性を重視する配点設計だったと読み取れる。

失格条件も明記されている。「審査委員の3名以上が50点に満たない点数を付けた提案者は、順位にかかわらず委託候補者としない」との規定があり、総合点で上位でも複数の委員から著しく低い評価を受けた提案は失格となる仕組みである。同点の場合は審査員の多数決で順位を決めるとされている。

勝敗の分かれ目——「業務共通」と「実施体制」

2次審査(5名×100点=500点満点)の結果は、最優秀提案事業者となった株式会社プラップジャパンが433.90点、次点のF社が400.70点、E社376.00点、D社337.00点だった。1位と2位の差は33.2点である。

項目別の得点差を見ると、価格点はプラップジャパン49.90点に対し、総合3位のE社と4位のD社が50.00点、次点のF社が49.70点と、4社が0.30点差の範囲にほぼ横並びで、最高点はむしろ総合下位の2社だった。すなわち本件は価格の安さでは決していない。差が最も開いたのは「業務共通」(125点満点)で、プラップジャパンの115点に対しF社は105点、E社は95点、D社は85点と、10点以上の開きがあった。次いで「委託業務の実施体制」(75点満点)でもプラップジャパンの63点に対しF社54点、E社51点、D社42点という差がついている。

委員コメント(会議録別紙)を見ると、この2項目の点差と評価文言は対応している。プラップジャパンへの評価は「分析力と提案の具体性が高く、支援内容のイメージが明確で安心感がある」「チームの連携力と専門性のバランスが良く、柔軟な対応力も期待できる」というものだった。一方、次点のF社には「山梨県の背景や課題をよく理解した上での提案であり、深掘りができている」という肯定的な評価がありながらも、「協力会社との役割分担が見えにくい。また、突発的な案件が発生した際の連絡体制に不安が残る」という指摘があり、これが実施体制の得点差(63対54)に反映されたと考えられる。D社には「体制や支援内容への質問の回答が曖昧であった」「代表以外のリレーション力が見えにくく実行面や継続性に不安が残る」との指摘があり、実施体制が4社中最低の42点にとどまった一因と読み取れる。E社には「テレビ偏重の提案で、他のメディアへの訴求力が見えにくい」との指摘があり、メディアアプローチが4社中最低の64点となったことと対応している可能性がある。

この案件から学べるポイント

  • 価格の安さは勝因ではない:本件の価格点は僅差(49.70〜50.00点のレンジ)で、価格競争力だけでは差別化にならない。係数配点を見ると、山梨県は「業務共通」(専門知識・実績・ネットワーク、係数5)と「メディアアプローチ」(露出獲得プロセスの具体性、係数4)を重視しており、価格(係数2)より配点比率が高い。提案書はまず配点係数の大きい項目に紙幅を割くべきである。
  • 実施体制の「曖昧さ」は明確な減点対象になる:次点・次々点企業への委員コメントには「回答が曖昧」「役割分担が見えにくい」「連絡体制に不安が残る」という共通の指摘が並んだ。人員配置・役割分担・緊急時の連絡体制は、抽象的な体制図ではなく、誰が何を担当し、突発対応時に誰が窓口になるかまで具体的に記述する必要がある。
  • 「総花的」な提案は評価されにくい:次点企業へのコメントには「全体的にまとまってはいるが、際立った強みや『引っかかり』が弱く総花的な印象を受けた」という指摘があった。全項目を平均的にこなす提案より、審査基準の重点項目(係数の大きい項目)に絞った提案の具体性が評価を左右したと考えられる。
  • 失格ラインの存在を前提に設計する:本件では「審査委員の3名以上が50点未満」で自動失格となる規定があった。得意分野に偏った提案で一部委員から著しく低い評価を受けると、総合点にかかわらず失格となるリスクがある。全審査項目に最低限の水準を満たす記述を置いたうえで、重点項目を厚くする設計が安全である。
  • 成果報酬型契約への備え:本件は契約基本額の約25%(最大4,757,500円)を広告換算値ベースの成果報酬とする設計だった。広報・PR領域の自治体案件では、この種の成果連動型の契約設計が採用される場合があり、提案段階から成果指標の算定方法(本件では株式会社PR TIMESの広告換算データを基準とする旨が仕様書に明記)を理解した提案が求められる。

参考資料

出典

記事中の議会での発言・答弁は、公開されている会議録・中継動画に基づいています。動画リンクは公開元の都合により視聴できなくなる場合があります。