【山梨県】「市町村らしさ」発見・発信支援業務、価格点は同点でも内容点で49点差——プロポーザル採点表を読む

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山梨県は2026年5月1日、「市町村らしさ」発見・発信支援業務委託に係る公募型プロポーザルを公告した。参加したのは2者で、いずれも参加資格審査を通過した。6月4日に開催された審査委員会の企画提案審査では、価格点が2者とも満点で並んだ一方、内容点で49点の差が生じ、順位が決した。県が審査結果を様式3「企画提案審査方式による選定結果一覧表」として公表しており、評価項目ごとの得点差から、何が勝敗を分けたのかを読み解くことができる。

案件の概要

項目内容
発注者山梨県高度政策推進局地域ブランドグループ
案件名令和8年度「市町村らしさ」発見・発信支援業務委託
予算上限額495万円(うち消費税及び地方消費税相当額45万円)。公募要領は「契約時の予定価格を示すものではなく、企画内容の規模を示すもの」と明記
業務対象市川三郷町、身延町、山中湖村、小菅村、丹波山村の5町村(モデル参加)
業務委託期間契約締結日から2027年2月26日まで
参加申込期限2026年5月18日
企画提案書提出期限2026年6月1日
企画提案審査(プレゼンテーション)2026年6月4日
参加者数2者(いずれも参加資格審査を通過)

業務内容は、5町村それぞれの「風土・歴史・文化・産業・人の営み」を「文化的テロワール(地域特性の言語化)」として捉え直し、町村職員や地域関係者が主体となって地域資源を言語化するプロセスを、ワークショップの企画・進行支援というかたちで伴走する内容である。現地ワークショップを5町村×3回、職員向け研修会(リーダー研修)を1回、キックオフ・中間・最終の3発表会の進行支援を行うことが仕様書に明記されている。

審査の建て付け——資格審査と内容審査の二段階

審査は「参加資格審査」と「企画提案審査」の二段階で構成される。参加資格審査は書面審査で、(1)類似業務の経験や専門知識、(2)業務実施能力・体制、(3)経営状況の3項目をそれぞれ「問題あり・問題なし」で判定する合否方式であり、配点は設けられていない。企画提案審査は、この資格審査を通過した者を対象に、20分間のプレゼンテーションと10分間の質疑応答によって行われた。

会議録によれば、審査は「審査委員に企業名がわからないように運営する」とされ、企画提案者による自己紹介も行われていない。企画提案書の様式でも、提案者を特定できる情報の記載は表紙のみに限定され、見積書も提案者名・住所を伏せたうえで審査委員に配付する運用となっている。評価内容そのものに提案者の属性が影響しない設計が徹底されている点は、他の同種案件と比較しても踏み込んだ仕組みといえる。

審査委員会の委員は5人で、内訳は下記のとおりである(役職・所属のみ。個人名は本記事では扱わない)。

区分所属・肩書き
外部委員公立大学法人山梨県立大学 国際政策学部総合政策学科 教授
外部委員公益社団法人やまなし観光推進機構 専務理事
外部委員フリー編集・ライター(元 地域情報誌編集長)
県職員委員山梨県高度政策推進局 次長(地域ブランド戦略監兼務)※委員長
県職員委員山梨県総務部市町村課 課長

外部委員3人・県職員委員2人という構成で、委員長は事務局提案に基づき県職員委員(次長)が務めた。会議録では委員長選任・運営要綱の制定・非公開決定のいずれも「異議なし」で決定されており、審議過程で意見が分かれた記録は確認できない。

配点表——内容点130点・価格点10点、委員5人で700点満点

企画提案審査の配点は、審査委員1人あたり140点満点(内容点130点+価格点10点)で、これに5人分を合計した700点満点で順位を決める方式である。評価点は10点満点で審査委員が採点し、そこに項目ごとの係数を掛けて配点化する。

審査項目評価点満点係数配点(委員1人あたり)配点(委員5人合計)
ア 業務に対する理解度10220100
イ(1) 「市町村らしさ」の発見・言語化支援10440200
イ(2) 職員向け研修会(リーダー研修)支援1011050
イ(3) キックオフ・中間・最終発表会支援10220100
ウ 業務実施計画1011050
エ 評価指標(KPI)1011050
オ 業務実施体制1011050
カ 過去の実績・類似業務経験・専門知識1011050
Ⅱ 価格点(配点×最低価格÷提案者価格)1050
合計140700

イ「企画提案内容」全体((1)(2)(3)の合計)で1人あたり70点、5人合計350点となり、単独項目としては最大の配点である。次いで「業務に対する理解度」(1人20点・合計100点)が大きい。逆に業務実施計画・KPI・実施体制・過去実績はいずれも1人10点・合計50点均等で、価格点も1人10点・合計50点と、内容点の一部項目より小さい配点にとどまる。

失格ライン(順位にかかわらず委託候補としない条件)も明確に定められている。(1)審査委員2名以上が評価点2点以下とした項目が1つでもある場合、(2)審査委員2名以上が審査点(140点満点)を70点未満とした場合、のいずれかに該当すると失格となる。会議録では、5点以上を「問題なく事業を実施できる水準」、1〜2点を「他の項目に優れたところがあっても補うことができない大きな欠点」と説明しており、単純な合計点勝負ではなく、致命的な欠点の有無を先にふるいにかける設計であることが読み取れる。

実際の得点——価格は同点、内容点の差がそのまま順位差に

県公表の「企画提案審査方式による選定結果一覧表」(様式3)によれば、第一順位の委託候補者と次点事業者の得点は次のとおりであった。

評価項目(配点は委員5人合計)第一順位次点事業者
業務に対する理解度(100点満点)7662
企画提案内容(350点満点)246224
業務実施計画(50点満点)3432
評価指標(KPI)(50点満点)3734
業務実施体制(50点満点)3732
過去の実績・類似業務経験・専門知識(50点満点)3431
価格(50点満点)5050
審査結果合計(700点満点)514465

総合点の差は49点で、そのすべてが内容点の差から生じている。価格点は2者とも50点満点で並んでおり、価格点の計算式(配点×応募者中の最低価格÷提案者の価格)の性質上、これは両者が実質的に同一の最低価格を提示したか、少なくとも価格差が点差に反映されない水準に収まっていたことを示している。つまり本件では、価格による差別化の余地がほぼなく、内容点だけで順位が決した案件だったと公開資料から読み取れる。

内容点の内訳を配点に対する割合で見ると、最大配点の「企画提案内容」(350点満点)の差は22点で、満点比では約6.3%にとどまる。一方、「業務に対する理解度」(100点満点)の差は14点で、満点比では14%に達し、配点に対する差の比率としてはこちらのほうが大きい。仕様書は「業務に対する理解度」の評価観点として「本業務の趣旨・目的を十分に理解した上で、全体の企画コンセプトが示されているか」「『山梨の文化的テロワール』に対する理解があるか」の2点を挙げており、審査基準に明記されたこの観点の理解度が、配点の大きさ以上に順位差へ寄与した可能性がある。ただし、これは得点差の比率から読み取れる傾向であり、審査委員の評価理由そのものは非公表であるため、断定はできない。

なお、受託事業者の名称は「契約後に別途山梨県のホームページで公表する」とされており、本記事執筆時点(2026年7月14日)では公表資料上に記載がなく、確認できていない。公募要領は、公表内容を「評価基準、配点及び各企画提案者の評価基準毎の得点と総合点、契約者の名称、契約締結年月日、契約金額等」とし、「契約者以外の企画提案者の名称は公表しない」と明記している。次点事業者が今後も匿名で扱われる設計であることは、公開資料から確認できる。

この案件から学べるポイント

  • 価格点で差がつかない案件では、内容点の配分そのものが勝敗を左右する。 本件は700点満点のうち価格点はわずか50点(7.1%)で、しかも2者が同点となった。予算上限額が明示され、価格競争の余地が限られる小規模委託業務では、内容点の各項目にどれだけ配点が振られているかを事前に確認し、配点の大きい項目(本件では「企画提案内容」)に提案の厚みを集中させる設計が有効である。
  • 「業務に対する理解度」のような小配点項目でも、満点比の差は無視できない。 配点自体が小さくても、審査基準に明記された固有のキーワード(本件では「山梨の文化的テロワール」)への理解を具体的に示せているかどうかで、満点比では大きな差がつく余地がある。仕様書・公募要領に登場する自治体固有の用語・概念は、提案書の中で正面から言及し、理解を示す記述を意識すべきである。
  • 匿名審査を前提とした運営では、実績・体制の記載が唯一の差別化材料になる。 本件は審査委員に企業名がわからない運営方式であり、自己紹介や提案者を示す情報の記載が禁じられている。ブランドや過去の取引実績を前面に出す提案は通用せず、提案書内に記載された実施体制・実績の具体性そのものが評価対象になる。匿名審査を採用する自治体案件では、社名に頼らない提案書の完成度が問われる。
  • 失格ラインの構造を理解しておく。 本件は「委員2名以上が評価点2点以下とした項目が1つでもあれば失格」「委員2名以上が審査点70点未満なら失格」という基準を設けている。総合点で優位に立っていても、一部の審査委員から見て致命的な欠点があると判断されれば失格となりうる設計であり、提案書の弱点を1つでも残さないことが、加点以上に重要になる案件がある。

参考資料

出典

記事中の議会での発言・答弁は、公開されている会議録・中継動画に基づいています。動画リンクは公開元の都合により視聴できなくなる場合があります。