【山梨県】価格点は3者横並び、決め手は提案内容——若手料理人成長支援業務プロポーザルの採点を読む

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山梨県が2025年7月8日に審査した「令和7年度若手料理人成長支援業務委託」の公募型プロポーザルで、株式会社ぐるなびが総合点473点(600点満点)を獲得し、次点の企画提案者に26点差で受託候補者に選ばれた。県は選定結果一覧表に加え、審査会の会議録も公開しており、点数の内訳から「どの提案要素で差がついたか」をたどることができる。価格点は応募3者が満点で並び、実質的な勝負は提案内容の評価項目で決着していた。

概要

項目内容
契約名令和7年度若手料理人成長支援業務委託
発注者山梨県観光文化・スポーツ部観光振興グループ(美酒・美食)
予算限度額1,035万4千円(消費税及び地方消費税を含む。契約時の予定価格ではなく企画規模の目安として公告)
契約金額(税込)1,026万800円
履行期間契約締結日から2026年3月13日まで
契約方式企画提案審査随意契約(地方自治法施行令第167条の2第1項第2号)
受託候補者株式会社ぐるなび
応募者数3者(株式会社ぐるなび、企画提案者A、企画提案者B。A・Bは県が選定結果一覧表で匿名表記)
審査日2025年7月8日

業務内容は、若手料理人と有名シェフによる「特別ダイニングプログラム」(2回以上)、それに続く期間限定の「チャレンジレストラン」の運営、雑誌メディア等を活用した情報発信(2回以上)、アンケートの実施・分析などで構成される。KPIは「参加する若手料理人2名以上」「情報発信回数2回以上」で、仕様書に明記されていた。

採点方式——ブラインド審査と下限点ルール

会議録によると、審査は次のようなルールで運営された。

  • プレゼンテーション15分、質疑応答10分の合計25分の審査を1社ごとに実施した。
  • 審査は審査委員に企業名がわからないように運営し、企画提案者の自己紹介も行わない、いわゆるブラインド審査の形式を採った。
  • 採点は評価項目ごとにA〜Eの5段階評価とし、最高点Aを5点、最低点Eを1点として、そこに評価項目ごとの加重倍率を掛けた値を評価点とする方式である。
  • 審査委員は5名で、1人当たりの審査点は120点満点。これに審査委員5名分を合計した600点が総合評価の満点となる(今回の総合評価473点・447点・377点は、いずれもこの600点満点に対する得点である)。
  • 失格条件として、審査委員の2名以上が単独の審査点を50点未満(120点中)とした提案者は、委託候補者として特定しないというルールが設けられていた。
  • 最高得点が同点の場合は、経費の見積り等を総合的に判断して委託候補者を選定するとされていた。
  • 総得点が1位であっても、仕様書に沿わない提案や著しく得点の低い審査項目がある場合は、候補者に選定しないことがあるとの留保も公募要領に明記されていた。

審査委員会は「山梨県公募型プロポーザル方式事業者選定等委員会」の枠組みで、山梨県附属機関の設置に関する条例第2条第2項に基づき2025年5月29日に設置された。委員数は5人で、委員の公募制は採用していない。会議録によれば、委員のうち1人は県観光振興監(県職員)が委員長を兼務した。残り4人の所属・専門分野は、公開されている会議録・選定結果一覧表からは確認できない。審査会自体は、企画提案の内容に事業者のノウハウが含まれることを理由に非公開で開催された。

採点表の構造——配点は一律5点、差をつけるのは「加重倍率」

本件の評価基準表で目を引くのは、全評価項目の基礎配点が一律5点に統一されている点である。項目間の重みづけは、配点そのものではなく「加重倍率」で表現する方式を採っている。

区分評価項目加重倍率1者・1委員あたり満点5委員合計の満点
業務遂行能力類似事業の実績×15点25点
業務遂行能力業務実施体制×15点25点
業務遂行能力業務実施スケジュール×15点25点
提案内容業務目的の理解度×315点75点
提案内容料理人募集の実現可能性×420点100点
提案内容シェフ募集の実現可能性×315点75点
提案内容チャレンジレストランの内容×210点50点
提案内容雑誌メディア等の情報発信×210点50点
提案内容掲載雑誌のクオリティ×210点50点
提案内容アンケートの実施・分析×15点25点
提案内容事業全体の管理×15点25点
提案内容KPIの達成見込み×15点25点
価格点見積額の安さ×210点50点

最も重い加重倍率が付いたのは「料理人の募集については、3業務の趣旨を理解した将来有望な若手料理人を集める工夫などが検討された提案となっているか(実現可能性が高いか)」の項目で、加重倍率は4倍、5委員合計で100点分(総合600点の約17%)を占めた。次いで「業務目的の理解度」「シェフの募集」がそれぞれ加重倍率3倍(75点分)である。業務遂行能力(実績・体制・スケジュール)や、アンケート・事業管理・KPIといった運営面の項目は加重倍率1倍にとどまり、配点上は提案の中心である「若手料理人・シェフの集客プラン」に重心を置いた設計になっていることが読み取れる。

価格点の算出方法は「10点×応募者中の最低価格/提案者の価格」(加重倍率2倍、5委員合計50点満点)である。この算出式のもとで3者全員が満点の50点を得たという事実は、算出式上、3者の見積額が同額でなければ成立しない。つまり価格面では応募3者に差がなかったとみてよい。

得点差の内訳——勝敗はどこで分かれたか

株式会社ぐるなびの総合点473点、企画提案者Aの447点、企画提案者Bの377点という結果を、評価項目ごとの得点差で分解すると、次のようになる。

評価項目(5委員合計満点)ぐるなびABぐるなび−Aぐるなび−B
類似事業の実績(25点)191416+5+3
業務実施体制(25点)201715+3+5
業務実施スケジュール(25点)181715+1+3
業務目的の理解度(75点)605448+6+12
料理人募集の実現可能性(100点)807660+4+20
シェフ募集の実現可能性(75点)5454420+12
チャレンジレストラン(50点)363826−2+10
雑誌メディア等の情報発信(50点)423628+6+14
掲載雑誌のクオリティ(50点)4040300+10
アンケートの実施・分析(25点)1717160+1
事業全体の管理(25点)181716+1+2
KPIの達成見込み(25点)191715+2+4
価格点(50点)50505000
総合計(600点)473447377+26+96

ぐるなびとAの差はわずか26点(600点満点の4.3%)で、両者は「シェフ募集」「掲載雑誌のクオリティ」「アンケート」「価格点」の4項目で同点だった。さらに「チャレンジレストラン」の項目ではAがぐるなびを2点上回っている。つまり今回の審査では、単一の決定的な項目でぐるなびが圧勝したわけではなく、最も加重倍率の重い「料理人募集の実現可能性」で4点、次いで重い「業務目的の理解度」で6点、加重倍率2倍の「雑誌メディア等の情報発信」で6点というように、複数の項目で小さな差を積み重ねた結果、総合点で上回ったと読み取れる。特に配点構造上最も重い「料理人募集の実現可能性」でリードを保ったことは、僅差の結果を左右した可能性がある。

一方、次点のBは「価格点」を除くほぼ全ての項目でぐるなび・Aに劣り、とりわけ加重倍率の重い「料理人募集の実現可能性」で20点、「雑誌メディア等の情報発信」で14点、「業務目的の理解度」「シェフ募集の実現可能性」でそれぞれ12点の差がついた。仕様書が求める「本県の取り組みや事業目的の十分な理解」「実現可能性の高い集客・発信プラン」という提案内容の核心部分で、Bは他の2者に及ばなかったことが得点の分布から確認できる。

この案件から学べるポイント

  • 価格勝負にならない設計だと心得る:本件は価格点の加重倍率が2倍(50点満点、総合600点の約8%)にとどまり、実際に3者とも満点で並んだ。プロポーザル方式では、見積額を絞り込むよりも、仕様書が明示する重点項目への提案の作り込みに時間と紙幅を割く方が得点に直結しやすい。
  • 配点表の「加重倍率」を読み解いてから提案書を書く:本件のように基礎配点が項目ごとに一律でも、加重倍率によって実質的な重みは4倍も変わり得る。公募要領・評価基準が公開されている案件では、どの項目に高い加重倍率が付いているかを事前に確認し、そこに提案の紙幅・具体性を集中させることが得点の底上げにつながる。
  • 仕様書の各項目に「対応関係」を明示する:本件の評価基準表は「【4 業務内容(1)ウ】」のように、評価項目ごとに仕様書の該当条項番号を注記していた。審査委員が採点しやすいよう、提案書側も仕様書の項目番号と対応させて記述する構成が有利に働くと考えられる。
  • 僅差の勝負では「積み重ね」が結果を左右する:今回の1位と2位の差はわずか26点で、複数の項目で同点や逆転すら生じていた。1つの目立つ提案アイデアに賭けるのではなく、配点の大きい項目を落とさず、かつ運営面(実施体制・スケジュール等の加重倍率1倍の項目)でも取りこぼさない「総合力」の提案が、僅差の審査を制する可能性がある。
  • 会議録が公開される案件では、運営ルールそのものが情報になる:本件はブラインド審査(企業名を伏せた審査)や、審査委員2名以上が50点未満とした場合の失格条件など、審査の運営ルールが会議録・公募要領で明記されていた。こうした運営ルールを事前に把握しておくことは、当日のプレゼンテーションの組み立て(自己紹介を省く前提での資料設計など)にも影響する。

参考資料

出典

記事中の議会での発言・答弁は、公開されている会議録・中継動画に基づいています。動画リンクは公開元の都合により視聴できなくなる場合があります。