【港区】広聴システム再構築プロポーザル——書類審査首位から二次審査で逆転された20点差

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東京都港区は2025年10月21日、「広聴システム再構築に係るシステム開発業務委託」の公募型プロポーザルでコムチュア株式会社を事業候補者に決定した。区が公表した一次審査・二次審査それぞれの採点集計表を突き合わせると、応募2者のうち一次審査(書類審査)では次点となった事業者(区の資料では「A事業者」と表記)が1,578点対1,477点でリードしていたにもかかわらず、二次審査(プレゼンテーション・ヒアリング)でコムチュアが逆転し、総合評価3,310点満点で2,337点対2,317点、点差20点で決着したことが確認できる。項目別の得点を見ると、逆転の起点は「提案の発展性」という1項目に集中していたことが読み取れる。

案件の概要

契約名は「広聴システム再構築に係るシステム開発業務委託」。事業規模の上限は11,748,000円(税込)、履行期間は契約締結日から2026年3月31日までである。募集要項によれば、区は2014年3月に運用を開始した現行の広聴システムについて、2024年度に実施した職員アンケートで「直感的な操作性」「類似意見への回答案自動作成機能」など業務効率化の必要性が明らかになったとしており、港区DX推進計画に基づき生成AI等の先端技術を活用した分析機能の実装を求める内容だった。

公募スケジュールは2025年9月4日から26日まで募集要項を配布し、同日午後5時までに参加表明書・企画提案書の提出を締め切った。一次審査結果通知は10月10日、二次審査(プレゼンテーション、実施時間30分程度)は10月17日、二次審査結果通知は10月21日、契約締結・業務開始は11月4日というスケジュールで進んだ。参加資格には地方自治法施行令第167条の4への非該当、経営不振状態でないこと、指名停止措置を受けていないこと、暴力団排除措置要綱に該当しないことなどが列挙されている。なお、募集要項には「事業規模を超えての提案を行った場合は、失格とします」という規定があり、見積価額が事業規模の上限を上回る提案は失格となる仕組みが明記されている。

審査体制——外部3名・内部4名の7人体制

審査を担ったのは「広聴システム再構築に係るシステム開発業務委託事業候補者選考委員会」である。委員は7名で構成され、外部委員3名(大学の非常勤講師1名、東京都デジタルサービス局のDX推進部門課長1名、特別区人事・厚生事務組合の情報政策推進課長1名)、区役所内部の委員4名(企画経営部長級1名〈審査期間中に人事異動で交代〉、企画課長1名、情報政策課長1名、地区総合支所の管理課長1名)という構成だった。委員長は外部の大学非常勤講師が務めている。

審査は非公開で実施された。募集要項・選考基準によれば、一次審査(書類審査)で第二次審査に進む事業者を3者程度に絞り込む方針だったが、本件は応募自体が2者にとどまったため、両者ともに二次審査へ進んでいる。審査結果の公表にあたっては、契約締結後に区のホームページで採点集計表を公開する一方、事業者名は最終的に選考した事業候補者(コムチュア)のみを公表し、次点の事業者は「A事業者」と符号で扱う運用が取られた。

採点表の設計——書類審査2,100点+加点160点、プレゼン最大1,050点

選考基準によれば、一次審査は「基本事項の評価」(配点80点)、「企画提案の評価」(配点210点)、「見積額の評価」(配点10点)の3区分・計300点満点を委員1名あたりの上限とし、委員7名分で満点2,100点となる。これに区内事業者優遇・ワークライフバランス推進企業認定・障害者雇用・環境配慮・災害協定の各評価(該当時に事務局採点配点の5%を加点、満点160点)が加わる。二次審査は「業務趣旨の理解」「提案の実現性」「提案の発展性」「理解・回答力」「取組意欲」「業務の省力化」の6項目(委員1名あたり配点150点)で、集計表上の素点は900点満点。この素点合計に1.17倍(四捨五入)の係数をかけて1,050点満点に換算する仕組みだった。素点900点は委員1名あたり150点の6名分に相当するが、二次審査を採点した委員の人数そのものは公開資料からは確認できない。一次審査(2,100点+加点160点)と二次審査(1,050点)を合算した3,310点満点が最終評価点である。

審査区分満点A事業者コムチュア
一次審査・基本事項の評価560点504点497点
一次審査・企画提案の評価1,470点1,004点910点
一次審査・見積額の評価70点70点70点
一次審査合計2,100点1,578点1,477点
加点項目160点0点32点
一次審査合計(加点込み)2,260点1,578点1,509点
二次審査合計(係数適用後)1,050点739点828点
総合評価3,310点2,317点2,337点

見積額の評価は両者とも満点70点で並び、価格面での差はついていない。一方、一次審査の「企画提案の評価」(満点1,470点)ではA事業者1,004点、コムチュア910点と94点の開きがあり、書類段階での提案内容そのものはA事業者が優位だったとうかがえる。加点項目はA事業者0点に対しコムチュアはワークライフバランス推進企業認定等に該当し32点を得ており、一次審査合計(加点込み)はA事業者1,578点、コムチュア1,509点と、書類審査終了時点でA事業者が69点リードしていた。

勝敗の分かれ目——プレゼンテーションの「提案の発展性」

逆転が生じたのは二次審査である。二次審査集計表の6項目を見ると、次のとおりA事業者とコムチュアの得点差が確認できる。

評価項目配点A事業者コムチュア
業務趣旨の理解30点138点132点
提案の実現性20点92点92点
提案の発展性30点108点156点
理解・回答力20点84点88点
取組意欲20点84点108点
業務の省力化30点126点132点
二次審査合計632点708点

「提案の実現性」は92点対92点の同点だったが、それ以外の5項目はいずれもコムチュアが上回った。中でも「業務の将来性、創造性、発展性がうかがえる提案がされているか」を問う「提案の発展性」は108点対156点と48点差がつき、6項目中最大の開きとなった。「業務実施への積極的な意欲がみられ、柔軟性に富んだ誠実な遂行が期待できるか」を問う「取組意欲」も84点対108点と24点差がついている。二次審査合計は632点対708点で76点差、これに1.17倍の係数を適用した後の点差は89点(739点対828点)に広がった。これが、書類審査時点でA事業者が持っていた69点のリードを覆すのに十分な差となり、総合評価では逆にコムチュアが20点上回る結果になった。

区が公表した選考理由には「広聴システムの直感的な操作やユーザビリティ向上のほか、回答案の自動作成機能等により、職員の業務効率化の向上に繋がることが期待でき、高く評価できる」「区民の声や区の対応等について、生成AI等のデジタル技術を用いて分析し、投稿を要約し、施策に反映することで、区民生活の向上に繋がるものと期待でき、高く評価できる」「将来的な拡張性や柔軟性に優れていると評価できる」の3点が挙げられている。これらの文言は、二次審査で最大の得点差がついた「提案の発展性」(将来性・創造性・発展性)や「業務の省力化」の評価視点と対応しており、書類上の機能充足だけでなく、プレゼンテーションを通じて将来の拡張性・柔軟性をどう説明できたかが最終的な勝敗を左右した可能性がある。

この案件から学べるポイント

  • 書類審査の優位は、プレゼンテーションで覆り得る:A事業者は書類審査(一次審査・加点込み)で69点リードしていたが、二次審査で89点差(係数適用後)をつけられ逆転された。一次審査(加点込み2,260点)と二次審査(1,050点)は満点で約2対1だが、二次審査の方が項目ごとの点差が開きやすい構造だとうかがえる。書類提出後も、プレゼンテーションの準備に十分な時間を割くべきである。
  • 「発展性」「意欲」は独立した評価項目である:本件の二次審査には「業務の将来性、創造性、発展性がうかがえる提案がされているか」「業務実施への積極的な意欲がみられ、柔軟性に富んだ誠実な遂行が期待できるか」という項目があり、いずれも逆転の主要因となった。仕様を満たす説明にとどまらず、将来の拡張性や担当者の熱意を言語化して伝える必要がある。
  • 加点項目は小さくても侮れない:本件の加点項目(区内事業者優遇・ワークライフバランス推進企業認定など、各満点の5%)は32点にとどまったが、最終的な点差20点との比較では無視できない大きさだった。該当し得る認定・実績があれば、提案時に確実に記載すべきである。
  • 価格・機能充足は差別化要因になりにくい:本件は見積額評価が両者満点で並び、一次審査の機能要件充足でも項目ごとに一進一退だった。価格や必須機能の充足は「土台」であり、勝敗を分けたのは企画提案とプレゼンテーションでの説明力だったと読み取れる。
  • 失格条件を前提に見積を設計する:本件は「事業規模を超えての提案を行った場合は、失格とします」という規定があり、上限額(11,748,000円)を超える提案は採点以前に排除される。上限額の把握と、その範囲内での提案設計が前提条件となる。

参考資料

出典

記事中の議会での発言・答弁は、公開されている会議録・中継動画に基づいています。動画リンクは公開元の都合により視聴できなくなる場合があります。