自治体への飛び込み営業はなぜ空振りに終わりやすいか——事前に確認できる公開情報の範囲
自治体庁舎への予約なしの訪問は、担当者の特定にも情報収集にもつながりにくい。自治体の組織や所管、議会の会議録は公開されており、訪問前に確認できる情報の範囲は広い。本稿は、飛び込み営業が空振りしやすい構造と、公開情報で代替できる部分を整理する。
なぜ空振りしやすいか
第一に、最初に応対する窓口が、必ずしも案件の担当ではない。受付や入り口付近の職員は業務経験が浅いこともあり、専門的な問い合わせを適切な部署につなぐとは限らない。会計年度任用職員のように、年度ごとの契約で特定の実務を担う職員もいる。
第二に、自治体の意思決定は担当者一人では完結しない。事業の採否は、所管課から上位の役職、財政・企画の部門を経て、最終的に予算や議会の議決に結びつく。約束のない訪問でその場の担当者に話をしても、決裁の流れに乗る保証はない。相手の業務時間を割くだけに終わりやすい。
訪問前に確認できる公開情報
自治体の多くは、組織図と事務分掌をホームページで公開している。どの部が何を所管するかは、訪問しなくても把握できる。
課題そのものを知る手がかりも公開されている。地方自治法第123条は、議会に会議録の調製を定めており、総務省は会議録をホームページで公開するよう各議会に促している。議員の質問と行政側の答弁には、自治体が現に直面する課題と、それにどう対応する方針かが具体的に記録される。市区町村の総合計画にも、中期の方向性と重点施策が示される。これらを読み込めば、「どの部署が、いま何に取り組もうとしているか」を訪問前に絞り込める。
当社が議会の会議録を横断的に集計したところ、過去1年間で下水道の老朽化・更新は822自治体、消防団員の確保は801自治体の議会で議論されていた(自治体の課題ランキング)。どの自治体が、どの課題を、どの所管で議論しているかは、足を運ばなくても会議録からたどれる。
訪問前に確認できる公開情報
- 組織図・事務分掌:どの部が何を所管するか
- 議会の会議録:現に直面する課題と、それへの対応方針
- 総合計画:中期の方向性と重点施策
- 担当課の直通番号:代表番号での取り次ぎ依頼は相手の手間になりやすい
業務を妨げない接触へ
自治体は税で運営され、職員の時間は公共の資源でもある。事前確認なしの訪問で応対を求めることは、その資源を一方的に消費することになりかねない。所管と課題を公開情報で押さえたうえで、要件を簡潔に伝えられる状態にしてから接触する。この順序を踏むことが、双方にとって無駄の少ない関係の起点になる。
出典:
- 地方自治法(昭和22年法律第67号)第123条(e-Gov法令検索)(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000067)
- 総務省「地方議会」(会議録の調製と公開)(https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_gyousei/bunken/chihogikai.html)
この記事は、自治体営業のリアル——よくある7つの勘違いと、正しい攻め方の論点別の解説です。