コラム

自治体の担当者は「専門家」とは限らない——だからこそ、あなたがスペシャリスト

自治体の担当者に、その分野の専門知識を期待しすぎていないか。多くの担当者は、いろいろな部署を異動してたどり着いた人だ。その分野の専門家とは限らない。だからこそ、提案する側であるあなたたちがスペシャリストになる。元自治体職員の目線で、担当者との向き合い方を書く。

この記事の要点

  • 担当者は異動でたどり着いた人が多く、その分野の専門性は必ずしも高くない。
  • 多いのは「事務作業のプロ」。役所の理屈は分かるが、新しいものは受け止めにくい。
  • 自分たちのルールの枠内で考え、適法性(法律に合っているか)を気にする。
  • だからこそ、専門家であるあなたが、自信を持って正しい情報・良い知見を伝える。
  • 「売る」より「一緒のパートナー」として、営業段階から伴走する意識を持つ。

担当者は「その道の専門家」とは限らない

自治体の担当者は、いろいろな部署を異動しながら、いまの部署にたどり着いていることが多い。だから、その分野の専門性という点では、必ずしも高くないと思っておいたほうがいい。理解のある、専門知識を備えた担当者に当たることは、なかなか無い。そこに期待しすぎると、「分かってくれるはず」という前提が崩れる。

補足すると、自治体職員が3年前後で部署を異動していくのは、珍しいことではない。多くの自治体が人材育成や癒着防止を目的に、おおむね3年周期のジョブローテーションを組んでいる。一方で、専門性が定着するには3年半以上の経験が要るとも指摘されており、異動の周期と専門性の育ちにくさは表裏の関係にある(参考: 公務員はなぜ約3年で異動するのか(ジチタイワークス))。つまり、担当者個人の資質の問題ではなく、仕組みとしてそうなっている。

事務のプロは、役所の理屈は分かるが新しいものは受け止めにくい

むしろ多いのは、しっかりと事務作業ができる人たちだ。事務作業ができるということは、役所の理屈——手続きやルール——をよく分かっているということでもある。ただ、その一方で、新しいものを受け止めるのは、あまり得意ではない場合が多い。自分たちのルールの枠の中でやろうとし、提案を既存の枠にはめこもうとする。そして、法律に合っているか、適法性を強く気にする。だから提案は、その枠の中でどう成立するかまで示せると、受け止められやすい。担当者に響く提案の考え方は職員が「必要なときだけ」を求める構造にも通じる。

実際、自治体自身がその分野の担い手不足を自覚し、外部の専門性を求めている場面は多い。当社が議会の会議録を横断的に集計したところ、過去1年間で専門職の確保・委託化は732自治体、会計年度任用職員は657自治体の議会で議論されていた(自治体の課題ランキング)。中で専門家が育ちにくいからこそ、外から確かな知見を持ち込む提案には価値がある。

だからこそ、あなたがスペシャリスト

担当者がその分野の専門家でないなら、専門家は誰か。提案しているあなたたちだ。だから、自信を持ってほしい。スペシャリストとして、「これは実はこうなんです」と、正しい情報や良い知見を、きちんと言葉にして伝える。売り込みの言葉ではなく、その分野を知る者として、担当者が判断するための材料を渡す。それが、事務のプロである担当者にとって、いちばん頼りになる。

「売る」より「一緒のパートナー」

そのうえで大切なのは、姿勢だ。「売りたい」という意識よりも、その自治体の課題を一緒に解決するパートナーという意識で、営業の段階から進めていく。まだ契約前の段階から、専門家として、対等に伴走する。その姿勢が伝わるだけで、担当者との関係は変わる。提案が「その他大勢の売り込み」から、「頼れる相談相手」に変わっていく。それが、他社にはない信頼につながる。


この記事は、自治体営業のリアル——よくある7つの勘違いと、正しい攻め方の論点別の解説です。

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